「巨人を出ろ」と後押ししてくれた恩人に感謝 「満塁男」の別の顔は「併殺打男」・駒田徳広さん プロ野球のレジェンド「名球会」連続インタビュー(35)
例えば王さんが「振り遅れちゃいけない。球は前で捉えないといけない」と言う。体の近くに来るとバットの細いところに当たるし、飛ばない。腕が伸びて当たれば遠心力も使えるし、飛ぶ。これは理解できるんです。でも、プロ野球が高度になって、いろんな変化球で緩急が出てくる。前で捉えようとして、それより球が遅かったらどうする? 王さんが何と言ったかというと「球が遅かったら、もっと前で打てばいい」。打席から前に出て打つわけにはいかないし、理解できなかった。王さんは「おまえは足を上げて着地している場所が何でいつも同じなんだ」と。普通はバッターって、いつも同じところに着地する。王さんは違うんだ。「球が速かったら、足を真下に下ろせばいい」。実際は真下には下りない。打ってやろうという勢いがあるから(スタンスが)狭めで足が下りる。着地したら回転運動が起きる。だから速い球が来たら早く回転させる。球が遅かったら、今度は足を下ろさなかったらいい。ステップ幅は広くなる。足を上げている間にバットを振るやつはいない。だから引きつけるんじゃなくて、前でさばけるように足の幅を調節する。
そこで最初に理解できたのは、足を上げないと高打率は残らないということ。体重移動の量は個々の選手で違うけど、足を上げることに関しては必ずこれをやらないと良い選手にはならない。東洋人で足を上げずに、そこそこ打ってるのは大谷翔平と、追い込まれた時の角中勝也だけ。大谷君は膝の柔軟性があるから足を上げる必要性もなく、うまく捉えきれるのではないかと思う。 ▽3割を打って、自分が成り立っている景色が見えた イチローが200安打の日本最速記録をつくった94年シーズンに、僕は29併殺打のセ・リーグ記録をつくった。(緩急を使われて)抜かれた時の球は我慢して引きつけてレフト方向に打てばヒットになる。下半身の柔軟性があった若い頃は打球が上がり、ショートの頭を越えて二塁打になったりした。年を取ってきて我慢しきれなくなると、いい当たりだけどショートゴロになる。だから一番ダブルプレーになりやすい。膝とかの柔軟性が悪くなり、瞬発力も衰えると、体の近くでうまく打たないと捉えきれない意識が出るんですよ。それをやると内野ゴロが出る。うまく打とうとしすぎちゃう。体重移動とか忘れちゃう。そこでもう一回、足を上げて打たないといけないと思った。