“夫の手綱”を妻が握らなくたっていい。発達障害のパートナーとの関係に疲れたときの「自分の守り方」【野波ツナさん】
このテクニック集は「秘密の攻略本」
――発達障害の専門医である宮尾益知先生、臨床心理士の滝口のぞみ先生の知見に加えて、野波さんが傷だらけになりながら、「これは手応えがあった」「これはダメだった」と経験も踏まえながら書いてくださっているのを、ひしひしと感じます。 野波:今までの経験や、宮尾先生や滝口先生に教えていただいたことを、集大成的に全部詰め込んだ感じです。「あの人」の「秘密の攻略本」ですね。だからこの本は、パートナーにはなるべく見られないようにこっそり読んで、さりげなく実践していただきたいです。「ここに書いてあったからやったんでしょ?」と思われると、かえって「あの人」のプライドが傷ついてしまう可能性があるからです。 ――「はじめに」で書いていらっしゃる言葉も印象的です。野波さんは、「今思えば当時の私は『ASD』『発達障害』という名称にとらわれすぎでした。そうではなく、目の前の夫の特性を知り、彼に伝わる言葉・表情を使うだけでよかったのです、きっと」と伝えていらっしゃいます。個性的な「あの人」のためやご自身のために、この本を手に取ろうとしている方にメッセージはありますか。 野波:この本を読んでいただいた方には、「自分が正しい」から、「あの人」に従ってもらおう、という考えに陥らないよう、そこだけ注意していただけたらと思っています。このテクニック集は、「あの人」とうまくやっていくためのもので、相手をコントロールするためのものではありません。「あの人」の行動が変わるまで、長い時間がかかることもありますが、いろいろと無理なく試してもらいながら、ご自身の隣にいる「あの人」との人間関係を作っていっていただけたら嬉しいです。 著者プロフィール 野波ツナ(のなみ・つな)さん 東京都生まれ、漫画家。少女漫画アシスタントなどを経て青年誌でデビュー。アスペルガー症候群(自閉スペクトラム症)のある夫との日常を綴った『旦那さんはアスペルガー』(コスミック出版)シリーズは累計20万部に達する話題作となった。他の作品に『うちの困ったさん』(リイド社)などがある。 イラスト/野波ツナ 取材・文/金澤英恵 協力/中満和大(こころとからだチーム)