“夫の手綱”を妻が握らなくたっていい。発達障害のパートナーとの関係に疲れたときの「自分の守り方」【野波ツナさん】
夫の手綱を、妻が握らなくたっていい
――最終章の「がんばっている“あなたへのヒント”」では、「あの人ファースト」じゃなく「自分ファースト」も大事だよ、と教えてくださっています。 野波:私もかつて、「自分が至らないせいでこうなってしまった」と無力感を感じていたことがあったんです。アキラさんのお母さんにも、「夫の手綱をしっかり握りなさい」「手の平の上で転がしなさい」と言われたことがありました。でも、「手綱」や「手の平で転がす」なんて言われても、あまりに抽象的すぎてどうしたらいいのか全然わからなかったんです。今思うと、あの人には手綱なんてついてないし! 手の平に乗せようとしても勝手にどっか行っちゃうし! と思えるんですけどね。若い頃は「頑張ろう、頑張ろう」と思い続けてしまって、ちょっと潰れてしまった時期があったんです。 ――「妻が手綱を握る」という言葉は、プレッシャーでもありますよね……。 野波:家族とか夫婦って、それぞれのユニットだと思うんです。たまたまうまくいっているユニットもあれば、そうでないところもある。うまくいっているユニットを参考にはしても、目標にまでは据えなくていいんじゃないかなって。どんな家庭がいいかなんて人それぞれなので、「お母さんみたいに」とか、「お姑さんみたいに」とか、そういった見本を作らない方がいい。 アキラさんも、行動がうまくいっていないことが多々あったけれど、人間性そのものはいい人だから一緒にいた、というのが大きいです。人柄はいいけど、アキラさんは結婚に向いていなかったんですよね。彼なりに無理して頑張っていたんだと思うんです。人とユニットを組むこと自体に向いていなかったのに、そこに引き入れてしまったのは、私自身でもあるなと思う部分もあります。
自分のことは自分で責任を取ってもらう
――とはいえ、パートナーも頑張りすぎない、自分を責めないことも大事、ということですよね。 野波:この本の監修もしてくださっている滝口のぞみ先生に教えていただいたことですが、旦那さんがアキラさんのようなタイプの人だと、奥さんが頑張りすぎてしまうことが多いそうです。「夫に期待できないから私がやらなきゃ」と思って先回りしすぎる妻は疲弊し、夫はどんどんダメになってしまう。やっぱり子育てと同じで、ある程度は手を離して、自分のことは自分で責任を取ってもらうことが大事だと感じます。私も、「妻なんだから夫をサポートしなきゃ」と思い込んでいましたが、それは必ずしも正しくなかったなと今では思っています。