認知症=徘徊のイメージが覆る!? 物理的に開かれたデイホームが“地域の人が交差する”場所になった理由
■■認知症がマイノリティーでなくなる未来に、日本が世界に先駆けてできること 「あおいけあ」のような場所が近くにあったら、どれだけ安心か。しかし、まだまだこのような場所は少ないのが現実です。「あおいけあ」への入所希望者も何十人と待機しているぐらい。このような場所が今後、増える可能性があるのかは最大の関心事です。 ――加藤さんから見て、介護施設のあり方は変わっている感覚ですか? 10年前に比べたら。そもそも、これだけ高齢化している中、 今の統計で考えると、85歳の41%が認知症で、90歳になると61%が認知症で、日本はこれからあっという間に4分の1ぐらいの人が認知症になるわけで、そうなると認知症の方が生活できない社会のほうがおかしい。 ――もっと認知症の特性に寄り添った社会デザインになることが急務ですね。 多くの人は自分のことを「健常者」だと思って生きていると思いますけど、 健常者というのはたまたまその社会において多数派を占めているだけなんです。みんなが車椅子で僕だけが歩いていたら、天井はこんなに高くないだろうし、車も車椅子がそのまま乗れるか、車椅子が100キロで走るかどちらかで、それに乗れない僕が障害者になる。 ――認知症があることが当たり前の社会に必然的になることを考えると、今は転換期なんですね。 高齢化が進んでいる日本でできた素晴らしい概念やケアの手法はこの先アジアで必要になって、その後、ヨーロッパに必要になってくる。だから世界中の人が、うちみたいな小さな会社にもバンバン視察に来るわけですよ。そしたら面白いわけじゃないですか。そういうことにちゃんと若い子たちが参入できたり、面白いことをやっていこうという形ができればいいんですけど。 ――今日お話した岡山県からの研修の方も、「まだまだ吸収することがありすぎて、研修期間が足りない!」と目をキラキラさせていました。 ああいう若い子たちにどんどんパスをしてくのは大事だと思います。ここのやり方をコピーして、そのままやることは、あまり意味がないんですよ。うちが学生の見学を受け入れているのは、うちより面白いことをやろう、自分の地域に合わせてもっとこうやったらって実践してくれたら素晴らしいと思うからです。 加藤さんが当たり前のように話す認知症との向き合い方は新鮮で、これが世界の共通認識になったら当事者も家族も安心して暮らせるだろうなとワクワクしました。そのためには、もっと多くの人が正しく認知症を知ること。そして日本で生まれた素晴らしいケアや概念を共有することが先決です。そのためにも、新しいケアや概念をリードする場所をもっと訪ねたいと強く思いました。 ■ 加治屋 真美 エンタメ系ライター。初めて観た韓国ドラマは’03年の「夏の香り」。東方神起との出会いをきっかけに本格的に韓国エンタメの沼にハマり、’14年にはTOPIK(韓国語能力試験)6級を取得。好きな韓国ドラマは「賢い医師生活」「大丈夫、愛だ」「二十五、二十一」などなど(選びきれません……)。Twitter@KajiyaMami
加治屋 真美