認知症=徘徊のイメージが覆る!? 物理的に開かれたデイホームが“地域の人が交差する”場所になった理由
■■認知症=徘徊のイメージが覆る!? ここでは「徘徊は起こらない」 認知症にいろいろな症状があるなか、家族が何よりも不安なのが「徘徊」です。それ以外のことは家の中で対処できそうだけれど、知らないうちに家を出ていかれてしまってはどうしようもない。そのまま行方不明になるのではないかという不安は、認知症だと診断されたその日から生まれる。そこでいきなり徘徊について伺ってみると、加藤さんいわく、「安心感があれば徘徊はしない」。 ――「あおいけあ」の敷地には壁がなく開放的で、思い描く介護施設のイメージとは違います。過ごしやすそうだなと思う反面、どうしても徘徊のことが気にかかってしまうのですが。 徘徊というのは、居心地が悪くてやることがないから出ていくんです。「毎日何時に起きなさい」「何時にごはん食べなさい」「じっと5時間座っていてください」と強制される生活をずっと続けてくださいと言われても、できませんよね。 ――ストレスで逃げ出したくなるでしょうね。 健康に近い我々でも嫌だなと思うのに、認知症でいろんなことがわからなくなって不安な人にそれをさせようとする発想のほうがおかしい。ここは掃き出し窓だらけだし、玄関は開けっ広げで出入り自由ですけど、徘徊は起こらないです。そもそも、徘徊や興奮暴力やせん妄は認知症の症状じゃないんです。 ――認知症の症状としてほぼ現れる中核症状ではなく、心理状態によって起こる可能性がある周辺症状ですよね。認知症の本にはたしかにそう書いてはありますが、一方で、徘徊で行方不明になった方のニュースのインパクトが強くて。ここでは「徘徊は起こらない」と言い切れるんですね。 はい、この場所に慣れている人であれば。鍵を閉めて閉じ込めて、「ここに長時間座っていなさい」と押し込めたことで出ていこうとするのが「徘徊」で、それに抵抗すると「興奮暴力」と言われちゃうんですよ。ここは自分が必要とされている場所だ、この人たちはちゃんと私のことをわかってくれる、私の部屋もちゃんとあるという安心感があれば、別に出ていく必要はないので、徘徊する必要もないですから。