北朝鮮が打ち上げた“軍事偵察衛星”――その能力を検証 国際社会の新たな脅威となるか?
2023年11月に軍事偵察衛星を打ち上げた北朝鮮。衛星は軌道に入り、“アメリカのホワイトハウスなどの撮影にも成功した”と主張している。果たして、その精度はどの程度なのか? さまざまな角度から検証してみたい。 【画像】金正恩氏と技術者の「宴会」写真を公開 “6年ぶり”の宴会場で… “偵察衛星”打ち上げ
■“約束”を破って強行したワケ
23年11月21日、午後10時40分すぎ。北朝鮮は国際社会に通告していた期間よりも前に、突如として偵察衛星を打ち上げた。事前に通告されていたのは「11月22日から12月1日」。その開始の1時間半ほど前に、打ち上げに踏み切ったのだ。ある意味で国際社会のウラをかくかのように強行された。何事でもウラをかきたい北朝鮮の“常とう手段”にも見える。 しかし、北朝鮮としては弾道ミサイル技術が用いられているとして、衛星の打ち上げに懸念を示す国際社会に対し、自らの正当性を強調するため、正常なプロセスを経て衛星を打ち上げているということを訴えたかったはず。にもかかわらず、なぜ自ら約束を破るような形で打ち上げを断行したのだろうか。 理由を探ると、北朝鮮の衛星保有の“悲願”、そして、韓国への対抗心が透けて見えてきた。 韓国軍関係者によると、今回、衛星の打ち上げを通告していた期間中は、初日の11月22日明け方から数日、天気が崩れる予報だったという。北朝鮮は23年、2度も打ち上げに失敗し、成功が見込まれるタイミングに一刻でも早く打ち上げたかったのではないかと分析されている。 また、韓国も当時、11月30日に初の軍事偵察衛星を打ち上げる計画をしていた。韓国メディアによると、北朝鮮の高官が「韓国より先に打ち上げろ」などと指示を出していたという。 2度の打ち上げ失敗と、迫る韓国の衛星打ち上げ。成功が見込まれれば、一刻も早く打ち上げたかった北朝鮮当局の切実さがうかがえる。そんな“悲願”の衛星の能力は、いかほどなのだろうか?
■異例の頻度での“撮影”報道 垣間見えるものは…
北朝鮮は今回の衛星を通じて、さまざまな場所を“撮影した”と主張している。その撮影対象は「アメリカ軍の基地」や「ホワイトハウス」「アメリカ国防総省」など多岐にわたる。ほとんどがアメリカに関係する場所だが、中にはなぜか「イタリア・ローマ」など、撮影理由がよくわからない地域も…。 北朝鮮が衛星からの撮影について国営メディアを通じて報じたのは、23年12月18日時点で合わせて6回。“異例”ともいえる頻度で報じていて、衛星を保有できたことが、いかにうれしいのかが垣間見える。 ただ気になるのは、北朝鮮が打ち上げたあの衛星で、本当に撮影ができているのかということだ。実は“衛星で撮影した”という写真は、まだ1枚も公開されていない。 北朝鮮は、撮影時刻を秒単位で伝えていて、リアルタイムで撮影できていることを強調する狙いがあるとみられる。韓国メディアによると、韓国軍が捕捉している衛星の軌跡と一致していて、北朝鮮の主張は概ね正しいとみられている。