タクシー・ライドシェアに「チップ文化」は根付くか? 配車アプリ普及で、月収アップに追い風? その効果と課題を考える
規制が影響するチップ獲得率
日本におけるチップ機能搭載のオンライン配車アプリの開発は、国内企業によって進められている。 例えば、ライドシェアに関する記事削除をメディアに要請したと報じられたGO(東京都港区)が提供するタクシーアプリ「GO」もそのひとつだ(同社は要請を否定)。このアプリには2023年10月からチップ機能が追加され、利用者は降車後24時間以内にGO Payをクレジットカードと連携させてチップを送ることができるようになった。 当初は東京都と神奈川県でのみ提供されていたが、対応エリアは着実に拡大している。この仕組みは、タクシーや日本版ライドシェアのドライバーにとって、貴重な副収入の源となり得る。 しかし、日本版ライドシェアのドライバーにとっては、チップ機能を十分に活用できない可能性がある。 というのも、ライドシェアドライバーには就労時間に関する厳格な規制があり、長時間の運行が難しいためだ。地域によって異なるが、日本版ライドシェアは基本的にタクシーの補完的な役割を果たしており、そのためチップを得られるかどうかは確率的な要素が強い。結果として、長時間勤務が可能なドライバーの方が、チップを得られる確率が高いという見方もある。
チップ機能の地域間格差拡大の懸念
このチップ機能は、利用者が 「アプリでタクシーや日本版ライドシェアを呼ぶ」 という行為が広まらなければ、効果を十分に発揮しない可能性がある。大都市圏、特に東京23区ではアプリの利用が進んでいるものの、地方都市では依然として「電話配車」が主流となっている。 これを受けて、国土交通省は「日本版ライドシェアは原則アプリで注文する」という方針を見直し、電話配車を恒久的手段として認めることを決定した。特に公共ライドシェアが交通空白地帯の解消に寄与する場面では、アプリを使ったクレジットカード連携支払いの習慣が未だ根付いていない地域も多い。 このように、日本における配車アプリのチップ機能はドライバーの収入に一定の貢献は期待できるものの、過度な期待は禁物だ。また、アプリの普及状況によって、チップ機能が積極的に利用される地域とほとんど利用されない地域の間で二極化が進み、地域間の情報格差が拡大する懸念もある。 したがって、配車アプリの開発者は、単なるチップ機能の導入にとどまらず、ドライバーの誠実な働きに応じた報酬制度を設計する必要がある。これらの取り組みは、今後さらに加速する可能性が高い。
上原寛(フリーライター)