タクシー・ライドシェアに「チップ文化」は根付くか? 配車アプリ普及で、月収アップに追い風? その効果と課題を考える
キャッシュレス時代の新習慣
アプリを通じたチップの支払いは、 「気恥ずかしさ」 を感じることなく行える点が大きな特徴となっている。特に日本人にとっては、この点が重要である。アプリを利用すれば、数百円程度の少額なチップを渡す際に 「少なくてすみませんが」 といった断りを入れる必要がなく、キャッシュレス決済の利便性を活かし、気が向いたタイミングで無理なくドライバーや配達員にチップを送ることができる。 このように、送る側も受け取る側もストレスを感じることなくチップ文化を形成した例がある。それがインドネシアだ。
Gojekが変えたジャワ島の移動文化
インドネシアには「オジェック」と呼ばれるバイクタクシーがあり、これは日本の原付二種に相当するバイクの後部に利用者を乗せる交通手段だ。このサービスをオンラインで手配できるようにしたのが『Gojek』というアプリで、インドネシア人の生活に大きな影響を与えたとされている。 Gojekがジャワ島都市部で急速に普及したのは2015年のことだ。それまではオジェックを利用する際、ライダーとの値段交渉が必要だったが、Gojekが導入されると、事前に運賃が確定し、誰でも簡単に利用できるようになった。 また、地図アプリと連携することで、利用者は目的地と乗車地点を正確に指定できるようになり、土地勘のないライダーでもスムーズに案内ができるようになった。都市部のライダーの多くは農村部や地方から出稼ぎに来た人々で、地元のランドマークを知らないこともあるが、Gojekのおかげで正確な場所に到着できるようになった。さらに、Gojekは「チップを巡るトラブル」の解消にも貢献した。 東南アジア諸国では、ドライバーやライダーが外国人や富裕層に対してしつこくチップを要求することがある。地元の富裕層は対処法を知っていることが多いが、外国人にとってはこのような状況がストレスの原因となることがある。これがタクシー利用後にトラブルに発展することも少なくなかった。 しかし、Gojekが登場すると、ライダーが強引にチップを要求することがなくなり(そのような行為は評価が下がり、最悪の場合、業務用アプリから排除される)、利用者は自分のタイミングで適切な額のチップを送れるようになった。