『難病ALSと闘うDJ』24歳で診断受け、一時は「生活に支障が出るほど気力なくした」 47歳の今、自身の生きざまを音楽で届ける「病気で悩む人たちに前向きになってほしい」
全身の筋肉が徐々に痩せて動かなくなり、最終的には自発呼吸も難しくなる難病、ALS(筋萎縮性側索硬化症)。進行性で根本的な治療法がなく、患者数は全国で9727人に上ります(2023年度・医療費受給者証所持者数より)。今回、24歳でALSと診断され、現在は病気の理解を広めるため「DJ」として音楽活動をしている47歳男性に密着しました。 【写真で見る】DJプレイで会場を盛り上げる『DJ特攻一番機』こと杉山正弘さん(47)
“目の動きだけ”でPCをあやつり会場を湧かす「DJ特攻一番機」
11月4日、大阪・梅田で開かれた音楽イベント。 (イベント司会者)「DJ特攻一番機さんのプレイを楽しんでいただきたいと思います」 ひときわ注目されたのが、DJ特攻一番機こと杉山正弘さん(47)。難病ALSの患者です。目の動きだけでパソコンをあやつり、曲と曲をスムーズにつないでいきます。 「おしゃれでかっこいい」 「最近聞いた中で一番良かった。まさか目でしているとは全くわからないような、すてきなDJでした」
ひとり暮らしをする杉山さんの日常
杉山さんは大阪市内でひとり暮らしをしています。自分で動かせるのは、目や口などに限られていて、ヘルパーや離れて暮らす家族が24時間態勢で生活をサポートしています。 自力で痰を吐き出すことが難しく、いずれは自発呼吸もできなくなるため、悩んだ末、4年前に気管切開し、声を失いました。 視線の動きを感知するパソコンを使って、自分の意志を伝えます。 (杉山正弘さん ※パソコンの音声)「仕事は現在していないので趣味80%睡眠20%くらいで生きています」 開いた口の形とまばたきのタイミングから言葉を読み取る「口文字」も使います。 (記者)「飲み物の好みはありますか?」 (介護者)「(口文字で聞き取って)桃。桃が大好きなので、甘いのが好き」
異変に気付いたのは22歳のとき…24歳でALSと診断「日常生活に支障が出るくらい気力もなくなった」
杉山さんが体の異変に気付いたのは、22歳のときでした。左手が動かしにくいと感じ始め、徐々に症状が身体中に広がっていきました。そして24歳のとき、ALSと診断されます。 (杉山正弘さん)「まあ相当へこみましたよ。それこそ日常生活に支障が出るくらい気力もなくなって、ただただぼーっと何もせず、一日を過ごす日々を送っていました」 診断のあと、一時期は人と会うのを避け、ふさぎこんでいたといいます。しかし、呼吸が苦しくなり入院したことがきっかけで「元気なうちに会いたい人に会おう」と、外に出るようになりました。 そこで出合ったのがDJの活動でした。もともと幅広い音楽を聴いていた杉山さん。5年前、市販されているDJソフトを目の動きで操れるようアレンジして、クラブイベントなどに参加するようになりました。最近のイチ推しは… (杉山正弘さん)「47年間ハマっていなかったアイドル文化にドはまりしてしまいました」 今年はすでに4回、コンサートにも足を運んだといいます。 (杉山正弘さん)「ただのアイドル好きのおじさんのお伝えになっていませんかね」