異国の店主と土地の味。/ミャンマー料理店『ゴールデン バガン』
各地のローカルな風を届けてくれる東京近郊の外国料理店の店主を、 料理家の土井光さんと巡るコラム。
土井光(以下、土井) ミャンマー料理を食べるのは、生まれて初めてです! なのでまずは、ミャンマーに根付いている食文化のことから聞かせてください。 土井さんからのコメント「ミャンマー料理がここまで発酵をうまく使い、独自の文化を築いていたとは知りませんでした。お茶の使い方も目から鱗。サイさんのお料理は、現地の心を残しながらも日本人にも理解しやすいように丁寧なお料理をされています。」 モモ ミャンマーは多民族国家なので、民族によって食文化がまるで違います。そして、バングラデシュ、インド、中国、ラオス、タイの5カ国と接しているので、周辺国からの影響を受けて独自に進化したものが多いです。例えばカレー。インドのようなスパイシーさはなく、ニンニクと玉ねぎと生姜とパプリカ粉でルーを作るのがミャンマー流です。
土井 風味の優しそうなカレーですね。モモさんと、旦那さんのサイさんは、どのような食文化を持つ民族なのですか? モモ ワタシたちは、北東部に位置するシャン州出身のシャン民族。寒い地域なので、ひよこ豆をアレンジした料理や発酵食品が多く、このお店でも、シャン民族特有の料理を振る舞っています。
土井 ひよこ豆料理は、豆の自然な甘味が感じられて、なんだか心が落ち着きます。発酵料理はどれも絶好の肴! ヌ・ソム・ムー(豚挽肉ソーセージ)は、フナとご飯を自然発酵させる鮒寿しなどのように、日本の伝統発酵文化を彷彿とさせる味わいもありますね。さて、ひととおりミャンマー料理を堪能させていただいたところで、日本にいらっしゃった経緯をお伺いしてもいいですか? モモ はじめて日本と接点を持つきっかけになったのは、ミャンマーが自国をPRするために1996年に打ち出した「VISIT MYANMAR YEAR 1996」という観光政策です。観光客や外国の企業関係者を多く歓迎した取り組みだったのですが、ワタシは父の仕事の手伝いで日本人の社長家族を案内し、大学でほんの少し勉強した日本語で頑張ってアテンドをしたのです。そうしたら、「旅行ガイドに向いていますね」と言ってもらえて。それを機に、大学院に通い直して日本語を学び、卒業後に日本語ガイドとして旅行会社に就職しました。