「三億円事件」有力容疑者は“警察官の息子”とされるも…「やつはシロだ」と昭和の名刑事・平塚八兵衛が判断した根拠とは
時効直前にも立川グループが
Sの自宅に出向いたのは、立川警察署刑事課の4人の刑事だった。前から捜査していた事件で、Sについて窃盗容疑で逮捕状が出ており、身柄を抑えるために自宅に向かったのだった。そのうちの一人の刑事はこう語っている。 「当時、Sが三億円事件の重要被疑者である可能性が高いので、彼を捜査している各所属は接触を控えるように、府中の特捜本部から指示が出ていたと言いますが、私たちは知りませんでした。ウチ(立川署)だけでなく、他の署でも主に窃盗事件で彼を捜査していましたからね。指示を出すというのも、発生から間もない頃なので、混乱の中で忘れ去られてしまったのではないでしょうか。裁判所から逮捕状が出ているのですから、すぐに逮捕に向かうのは当然のことですし……。でも、まさかあんなことになるとは」 平塚氏の捜査ではシロと断定されたSだが、時効直前の昭和50年11月、警視庁はSのかつての仲間で金融ブローカーの男(25)を恐喝容疑で逮捕。これはあくまで別件で、本命は三億円事件ではないかと大変な騒ぎになった。男もSと同じく、事件当時は18歳。立川市に住んでおり、都内の私立高校を中退して、立川グループに入っていた。 結果として、三億円事件での逮捕はなかったが、この男についても平塚氏は、 〈私は思わず「冗談じゃねえな」とつぶやいてしまった。何でこの男がホシに擬せられたのか、いっこうに合点がいかなかったのだ〉 なぜなら平塚氏には、犯人は単独犯であることに加え、もう一つのこだわりがあったからである。 【第3回「三億円事件“有名すぎるモンタージュ写真”は『犯人に似ていない』…昭和の名刑事・平塚八兵衛が迫った『真の犯人像』」あまりにも知られた、あのモンタージュ写真のウラにあった衝撃の事実に迫る】
デイリー新潮編集部
新潮社