日本にも打撃、深刻な干ばつで下がり続ける米ミシシッピ川の水位、農作物輸送に支障
米国が輸出する農作物の9割超、世界の輸出飼料穀物の約8割を運ぶ大河
気候変動が深刻化し、干ばつが頻繁に発生するようになり、ミシシッピ川の物流が滞り始めている。収穫されたばかりのトウモロコシから、中西部のカフェで提供されるコーヒー豆まで、年間5億トン近い物資が、この川を行き来する。 ギャラリー:日本にも打撃、下がり続ける米ミシシッピ川の水位 写真7点 ミシシッピ川の水位が低下することで困るのは米国だけではない。遠く離れた中国、日本、インドネシアでも、米中西部の穀物や大豆が重要な食料源となっている。米国から輸出される農作物の92%、世界の輸出飼料穀物の78%が、ミシシッピ川を通して運ばれているのだ。 ミシシッピ川では、複数のはしけをつなげて一度に押航するタグボートが活躍しているが、川の水位が30センチ低下するだけで、15隻のはしけで運べる大豆の量が2738トン減少する。これは、オリンピック用のプールをあふれさせるほどの量だ。 「結局は、誰が世界を食べさせるのかという話です」と、内陸水路の擁護団体である「ウォーターウェイズ評議会」のポール・ロード氏は言う。2022年には、河川の水位低下が200億ドル(約2兆9000億円)の貿易損失につながったと推測されている。 「米国の農家は食料を供給できます。しかし、それを運ぶ手段を確保しなければなりません。たとえば河川の水位低下という問題であれば、インフラを整え、浚渫(しゅんせつ)工事をして川を深くすることです」
中西部と世界を結ぶ重要な大動脈
ミズーリ州南東部で米、大豆、トウモロコシを育てているトム・ジェニングスさんも、干ばつの影響を目のあたりにして不安な気持ちを抱いている。 2023年の冬に川の水位が下がり、川岸に点在する穀物貯蔵庫まで穀物を取りに行けるはしけが減った。秋の収穫の最盛期には、一部のトラックは川まで作物を運んだものの、はしけ業者に受け入れを断られてそのまま引き返さなければならなかった。 作物を育てる水は、ジェニングスさんの場合ほぼすべて地下の帯水層から引いているため、今のところまだ干ばつの直接的な影響を受けていない。だが、それを輸送するはしけが確保できないのは大問題だった。 「顧客のはしけが足りなくなってしまったのです。ところがちょうどその顧客が鉄道コンテナの準備をしていたので、私たちの米も載せてもらいました。それがなかったら、はしけが来るまで仕事が止まっていたでしょう」 夏には特にミシシッピ川上流で雨量が増加したものの、2024年の収穫期を迎えようとしているときに、水位が再び下がり始めた。テネシー州メンフィスでは、通常よりも水位が3メートル低下した。