日本にも打撃、深刻な干ばつで下がり続ける米ミシシッピ川の水位、農作物輸送に支障
環境への負荷も高まる
水位が下がりすぎてはしけが航行できなくなると、大量の物資を輸送するための環境コストが増加する恐れがある。 テキサスA&M運輸研究所が2022年に行った調査では、はしけ輸送による炭素排出量がトラックで運んだ場合と比較しておよそ9分の1、鉄道で運んだ場合と比較すると半分で済むことが示されている。 2023年には、2400万トン以上の穀物や農作物が、ミシシッピ川を通って運ばれた。これをトラックで輸送しようとすると、隙間なく並んだ大型トレーラーの列が地球を半周しても足りないほどの台数が必要になる。
川の生きものたちにも影響
米国本土の河川の40%が流れ込むミシシッピ川は、環境の要でもある。 サルガッソ海から遡上するチョウザメ、ニシン、アメリカウナギは、ミシシッピ川沿いの氾濫原に大きく依存していると、オリビア・ドロシー氏は言う。氏は2024年に入るまで9年間、保護団体「アメリカン・リバース」のミシシッピ川回復プロジェクトを率いていた。 「巣作り、繁殖、休息のために水の流れが緩慢な場所を必要としている川の生きものはたくさんいます」。逆に、速い流れを得意とする魚はごくわずかだ。 イリノイ州イーストモリーンにあるドロシー氏の自宅は、ミシシッピ川からわずか5分しか離れていない。よく川でボートに乗ったり土手を散歩したりするというドロシー氏は、過去2年間下がり続ける川の水位を目の当たりにしてきた。 ドロシー氏が仕事を通して付けていた記録によると、近年、カワゲラ、カゲロウ、カなどの昆虫が孵化したときの大きさが小さくなっているという。 「これらの昆虫は渡り鳥にとって重要な食料源になっています。人間が食べるものを考えてみてください。脂肪分は牛肉からも魚からも取れますが、魚の脂肪のほうが健康的です。鳥にとっても、水生の昆虫が減ってしまうと、ほかで同じ栄養分を取ることができないかもしれません」 また、ムール貝の仲間や、他の生きものの餌になるニシンやヤウオなどの小魚も減っている。「原因はまだよくわかっていませんが、干ばつが長引いているため気がかりなことはたくさんあります」と、ドロシー氏は言う。