【独占インタビュー】”欧州の知性”ジャック・アタリが見通す「ガザ戦争」と「ウクライナ戦争」の行方
中東紛争のリスクを一気に高めたガザでの戦争、長引くロシアとウクライナの戦争、米国ではドナルド・トランプの大統領選勝利と、2024年も激動の国際情勢だった。2025年、世界はこれらの火種を抱えてどこへ向かうのか──。“欧州の知性”とも称されるフランスの賢人ジャック・アタリに聞く。 【画像】カメラに笑顔を向ける、ガザで住まいを失ったパレスチナ人の少女
混迷の中東情勢、2025年の行方
──2025年、ガザでの戦争は落ち着いていくのでしょうか。それとも悪化していくのでしょうか。 イスラエルとパレスチナが互いを国家として承認するときにのみ和平が可能になる、と常々言ってきました。 そのためには、ガザ地区を含むパレスチナ領すべてを管理する新たな権力が必要です。それはできれば、パレスチナ人によって民主的に選ばれ、国際社会からも支持される権力であるべきで、その権力がイスラエルを国家として承認するのです。 20年前はその理想からそれほど遠くなかった。しかしラディカルなハマスがガザで、ラディカルなベンヤミン・ネタニヤフがイスラエルで権力を握って以来、その理想からはほど遠い状態になってしまいました。 ですからハマスが消えて、ネタニヤフが退任したときにようやくガザに平和が訪れることになります。 ──米国の第2次トランプ政権は、この戦争にどう関わっていくと思われますか。 ドナルド・トランプはジョー・バイデン大統領と同じく、全力を尽くしてガザでの停戦を目指し、ハマスを排除しようとするだろうと思います。 また、中東湾岸諸国とも協力して、パレスチナとイスラエルの双方に対して互いを国家として承認するよう圧力をかけるでしょう。湾岸諸国もその二国家解決を明白に要望していますから。とくにイスラエルに対して、その路線で行くよう圧力をかけるかもしれません。 ──ガザでの戦争を機に、イランとイスラエルの緊張もこの1年で一気に高まりました。2025年、イランとイスラエルの正面衝突もあり得るのでしょうか。 ええ、アサド政権が崩壊したシリアがもはやイランの防壁でなくなったいま、イスラエルがイランにある軍事施設を空爆したければできる道が開けました。状況は大いに変わってきています。 ──アサド政権が崩壊したシリアは来年、さまざまな宗派や民族が混在するなかで、ひとつの国としてまとまれるのでしょうか。 それは国民の意志の問題なのでわかりません。たしかにシリアには多くの異なる共同体や宗教があり、これまではひとつの強力な政権しかありませんでした。その政権が崩壊したいま、問題は、また別の強力な政権が樹立するのか、そしてその政権は民主的なのか、独裁的なのかということです。これについては未知数です。