絶対味わうべき余市ワインの生産者3選と、北海道の自然派ワインを楽しめる札幌の名店へ!
世界に誇れるワイン造りに挑む、「キャメルファームワイナリー」。
明治時代から、余市はリンゴの一大産地として名を馳せていた。かつては余市駅の前の大通りに個人経営のリンゴ問屋が軒を連ねていたというのだから、その勢いがわかるだろう。しかし1980年頃にリンゴの市場価格の下落が勃発。そんな中「これからはワインだ!」と先見の明を持ってワイン用ブドウの栽培に乗り出したのが、地元のリンゴ農家だった藤本毅さんだった。以来、ワイン用ブドウ栽培農家のパイオニアとして40年、11ヘクタールに畑を広げ、余市のワイン造りを牽引してきた。藤本さんが後継者を探し始めた頃、コーヒー豆や輸入食品を取り扱うキャメル珈琲グループと巡り会った。日本の自然の恵みを世界へ届け、地域の活性化につながることを願い、2014年に「キャメルファームワイナリー」がスタートする。2017年 醸造所を開設、2018年にファーストヴィンテージをリリースした。
引き継いだブドウ樹はバッカス、ケルナー、レジェント、ブラウフレンキッシュ、ツヴァイゲルト......。いずれも寒さに強い、北海道を代表するドイツ系品種だ。近年ではピノ・ノワールやシャルドネなど国際品種も追加で植樹、19年からは除草剤の使用をやめ、減農薬にも取り組んでいる。ワイナリー長の伊藤愛さんは、取り組みについてこう語る。 「ワイナリーを始めて10年目になりますが、有機的な栽培はまだまだわからないことだらけです。畑で虫を発見したらすぐに写真を撮って調べ、それが益虫なのか害虫なのか、チームにデータを共有しています。ウサギが枝を齧って折ってしまったり、狐や鳥がブドウを食べにきたり、鹿が畑を荒らしたり......。下草も生えすぎると風通しが悪くなるので、草刈りも欠かせません。『ギシギシ』っていう葉の大きな繁殖力の強い雑草は抜くのもひと苦労で、スタッフたちとは『これがほうれん草だったらいいのにね』なんて話しながら作業しています(笑)」 藤本さんが画期的だったのは、通常は専門の農家が栽培するワイン用ブドウの苗木も自分で育ててしまったことだ。温室を自力で製作、細かく作業日誌を付けていた。畑の一画には苗木を植樹する台木育成用の畝も準備。そのノウハウを受け継ぎ、キャメルファームワイナリーでも一部の苗木は自社で育てることが可能になった。