多頭飼育崩壊招いた飼い主に怒り 「私も連れてって」と追いかけてきた猫 保護ボランティアは心の中で何度もわびた
「死んでいた猫のきょうだいは庭に埋めた」
猫たちの数は、家主の親子ですら「もう全然わからん」と言います。そして、「猫のきょうだいが部屋の中に『落ちていて』、よく見たら死んでいたから今朝、庭に埋めた」とも。 もはや返す言葉が浮かびませんが、はぴねす代表はまずは生まれて間もない子猫から保護していくことにしました。子猫1匹ずつを抱き上げてダンボールの中へ。しかし、中にはひどい脱水症状を起こしていたり、他の猫にかじられたのか肉球が完全にえぐれている子猫もいました。 当初、代表は保健所に対しこう伝えていました。 「保護には協力するが、キャパの都合上、猫を連れて帰ることはできない。また、保護した猫に早急に不妊手術を実施しますが、その後は、また民家に戻します。保健所のほうで民家にエサやりなどの管理や指導を継続して欲しい」 しかし、過酷すぎる生活を強いられる子猫たちを前に、代表はここまでの言葉を撤回。全匹保護は難しくとも、特に健康状態の悪い子猫を連れて帰り、動物病院で適切な治療を施した後、はぴねすの関係者や懇意の人たちとでお世話することにしました。
最後まで「私も連れてって!」と追いかけてきた白黒の猫
はぴねす代表はここで、保護活動をする上で避けて通れない難しさと切なさも抱きました。 この民家での保護活動中に人懐っこく甘えてきた白黒の猫がいました。 この白黒猫は「子猫たちとどこに行くの? 私も一緒に連れてって!」とばかりにケージの上に登ってきました。何度ケージからおろしても、白黒猫はまた飛び乗りジッと見つめてきます。「連れてって」と訴えるように。 今回の保護は前述の通りはぴねすにとっての「できること」の範疇を超えた状態。健康状態の悪い子猫だけに限定して連れ帰ることしかできませんでした。 民家から去ろうとした際、代表の後ろを、甘えてきた白黒猫が必死で追いかけてきました。草の覆い被さる荒れた道をずっと追いかけてきました。 しかし、いよいよ代表がクルマに乗り込みドアを閉めると、白黒猫は寂しそうに立ち止まり、家のほうにゆっくり引き返していきました。白黒猫の後ろ姿は代表の目にとても切なく映り、「自分の無力さに悔しさが込み上げた」と言います。 同様の話は、多くの保護団体関係者からよく耳にしますが、それでも「まずはできること」を実践する人たちの行動には頭が下がるばかりです。ひとまず、はぴねすが保護した子猫たちだけでなくこの多頭飼育崩壊現場にいる猫たちすべてが1匹ずつ幸せになってくれることを強く願ってやみません。 そして、こういった事態を行政もより積極的に考え、動物と人間が仲良く暮らすことができるより良い社会作りにもっと能動的に取り組んで欲しいとも思いました。 (まいどなニュース特約・松田 義人)
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