VWディーゼル排ガス問題 マツダの「不正ない」公式声明を検証する
マツダは9月29日、「マツダの排出ガス規制への適合対応について」というステートメントを発表し、ディーゼルエンジンについての不正がないことを宣言した。 【写真】「排ガス対策・静か・高回転」 常識を覆したマツダのディーゼル 今回のフォルクスワーゲンのディーゼルエンジン不正プログラム事件に際し、日本のユーザーがもっとも不安に思っていたのは、乗用車として国内で最も大きなシェアを持つマツダのディーゼルエンジン「SKYACTIV-D」は大丈夫なのかという事だろう。ユーザーにしてみれば、不安を感じるのは当然だ。 今回はそのマツダのシステムについて検証してみたいと思う。
フォルクスワーゲンの不正とは?
まずはフォルクスワーゲンの問題のおさらいからだ。フォルクスワーゲンは昨年までの欧州の排ガス規制「ユーロ5」に準拠してつくられていたディーゼルエンジン車を、ユーロ5より遥かに厳しい北米の規制「Tier2 Bin5」に適合させるため、テスト時のみ稼働するプログラムを用いて不正にパスしていた。これは確定事項だ。
またドイツのドブリント運輸相が明らかにした所によれば、ドイツ国内でも、同社の1.6リッターと2.0リッターのディーゼルエンジンを搭載する約280万台が同様の不正プログラムを搭載していたという。これについてはワーゲンがすでに認めている。 前述の様にユーロ5はNOx(窒素酸化物)に対してそれほど厳しい規制ではないので、ユーロ5適合エンジンに不正プログラムを使う必要があったとは考えにくい。現時点で、筆者は「ユーロ6」準拠の新しいエンジンをリリースする際、厳しくなった規制をクリアさせるためにTier2 Bin5の時と同じ手口で不正プログラムを使ったのではないかと考えている。 ドイツで行われた不正のメカニズムと対象エンジンについては、依然詳細が発表されていない。だが、同社のドイツ国内の販売台数は年間約120万台程度。さらにEU全体のディーゼル比率は約半分と言われている点から見ると、280万台という台数はおおよそ5年分に相当する。もちろんこの数値は概算である上、この中で特定エンジンだけが不正をしていたならば計算は違ってくる。 フォルクスワーゲンは2009年から、ディーゼルエンジンを旧世代のユーロ5準拠のEA189型からユーロ6準拠の新世代EA288型に移行しており、台数で見ると上記の計算方法で推定されるEA288型のボリュームはドブリント運輸相がアナウンスした280万台とおおよそ合致するのである。 さて、この不正プログラムが何をやっていたかと言えば、おそらく、燃料噴射量とタイミングの操作、EGR(排気ガス再循環)量の操作、NOx吸蔵触媒の予熱の組み合わせだろう。ソフトウエアだけでNOxを減らそうとすればできる事はそれしかない。 では、なぜその制御を通常運転時にやらなかったかと言えば、以下の問題が発生するからだ。出力の低下。CO2の増加。NOx吸蔵触媒の早期劣化。出力の低下はドライバビリティを低下させる。CO2の増加はユーザーの課税額に直結する(ゆえにEUでは燃費と同等にこのCO2排出量は売れ行きを左右する)。またNOx吸蔵触媒の劣化は加熱回数に依存するので、寿命が短くなりランニングコストを増大させる。 これが現時点で考えられるフォルクスワーゲンのディーゼル不正のあらましだ。