冬でも訪問できる鉄道廃線トンネル 大日影トンネル遊歩道と勝沼トンネルワインカーヴを歩く
ワインの熟成に適した薄暗い照明のトンネル内には、両側に多くのワインボトルが入った施錠付きの貯蔵ラックが並ぶ。ラックは1km以上先のトンネル出口付近まで続いていて、「勝沼ぶどうの丘」の専任スタッフが契約者からのオーダーによりフォークリフトで出し入れ作業を行っている。 なお、ワインなどはここで販売しておらず、駅から徒歩約20分の「勝沼ぶどうの丘」に、ショップやレストラン、飲み比べのできるワインサーバーなどがある。 ■ 地域にとっての「産業革命」 大日影トンネル、深沢トンネルの竣工による中央本線の開通、そしてスイッチバック式の勝沼駅の開業は、大正以降この地域のぶどうの生産、流通に大きな影響をもたらした。鉄道開通前は甲州街道を馬の背に載せて数日かけて運んでいたが、鮮度が求められるぶどうをスピーディーかつ大量に輸送できるようになった。 これは地域にとっては「産業革命」とも言うべきものだった。鉄道と駅の開業によりさまざまな品種のぶどうを首都圏などの市場に送ることができるようになったことで、勝沼一帯のぶどう畑は飛躍的に広がった。 また、トンネル建設で培った煉瓦による土木技術を生かし、地元で焼いた煉瓦や石材を使用した半地下のワイン貯蔵所も随所で建設された。明治31(1898)年にいち早く完成した「龍憲セラー」はその草分け的な存在として今も残っている。その後、甲州ワインは全国ブランドになり、鉄道を利用してぶどう狩りに訪れる観光客も増加した。 明治期に難工事の末に完成した大日影トンネル、深沢トンネルは、交通利便性を高めるだけでなく、ワイン産業の発展、観光の振興に大きく寄与した。前述の通り冬期でもトンネル内の温度は比較的安定しているので、そんな歴史ある名トンネルを、中央本線を利用して訪れてみてはいかがだろうか。 【通行・見学可能時間】 大日影トンネル遊歩道 9:00~16:00(年末年始を除く) 勝沼ワインカーヴ 9:00~16:00(年末年始を除く、季節により変動あり)※事務所で記帳後、ロープ手前のエリアのみ見学可。 【注意事項】 トンネル内の自転車、バイク等の走行は禁止されています。 勝沼ぶどう郷駅の駐車場は主に駅利用者用のため(勝沼ぶどうの丘に駐車場あり)、列車での訪問をおすすめします。 【参考情報】 大日影トンネル遊歩道(「ぐるり甲州市」より)
花田 欣也