古代エジプトのワニのミイラの胃に釣り針を発見! 2000年以上前の最後の食事が明らかに
ナイルの主
古代エジプト人はワニのことを「獰猛な捕食者」「危険の前兆」と見ていた一方で、自分たちの繁栄にとって、ワニの数を健全に保つことが不可欠であると信じていた。 彼らはワニの神ソベクを「ナイルの主」と崇め、野生のワニを神の化身と考えていた。ワニの頭を持つこの神は、見た目は恐ろしいものの、水、ナイル川の毎年の氾濫、植物、豊穣とも関連づけられていた 古代エジプトでは特定の神に捧げるためにさまざまな動物のミイラが作られたが、ワニもそうした動物の1つだった。 古代エジプトの神々には数万匹の動物のミイラが供物として捧げられたが、その中には数百匹の赤ちゃんワニも含まれていたと、ポーランド科学アカデミーのエジプト学者で、ワルシャワ・ミイラ・プロジェクトの研究者であるボイチェフ・エイスモンド氏は言う。なお氏は今回の研究には関与していない。 またエイスモンド氏は、ごく少数の「聖なる」ワニは、おそらく寿命を迎えるまで、ワニを崇める神殿で大切に飼育されていただろうと言う。例えば古代ギリシャの歴史家ヘロドトスは紀元前5世紀に、ファイユームの神聖なワニは「耳には金とガラスの飾りをつけ、前足にはブレスレットをはめて」、特別な餌と待遇を与えられていたと報告している。 マックナイト氏によれば、ワニを崇める神殿の神官たちは、おそらくナイル川の一部を柵で囲んで、供物にするための小さなワニを飼育していたようだ。供物を捧げたい人は神官に金を払ってワニを生け贄に捧げたが、その体長はせいぜい数十センチだったという。 一方、今回の研究で調べられたワニのミイラは、ナイルワニの大型で凶暴な成体だった。おそらく捕獲には大きな危険を伴ったはずだ。 このワニが捕獲された場所などの詳細が明らかになっていないので、その死とミイラ化をめぐる状況もよく分からない、とマックナイト氏は言う。 ちなみに、古代エジプトで捕獲され、ミイラにされた成体のワニの体内に魚と釣り針があることがX線スキャンによって判明したのは、今回が初めてではない。 2010年の『ナショナル ジオグラフィック』の記事によれば、サンフランシスコのフィービー・A・ハースト人類学博物館が所蔵する別の成体のワニのミイラのX線スキャンでも、ワニが死ぬ直前に食べた魚と、今回発見されたものによく似た釣り針が腹の中にあるのが見つかっている。