【配偶者控除の見直し】控除廃止でほぼ増税?「103万の壁」撤廃でパート主婦に訪れる新たな変化とは
政府税調での議論内容
2024年5月13日に行われた「第2回税制調査会」の議論要旨は、以下のとおりです。 ・配偶者控除が適用されるよう年収を調整することで、労働することや労働力を抑制していないか。 ・女性の社会進出が進んだ現代において、年収の壁をつくるような税制は納税者への公平性が保たれているのか。 ・税制上すでに年収の壁がなかったとしても、制度があることで「短く働くことがいいことだ」という雰囲気をつくってしまったように思う。個人所得課税の配偶者控除、特別扶養控除が本当に現代でも役割を果たしているのか考えるべきではないか。 いわゆる「年収の壁」や税控除制度が、働く意欲を削ぐものになっていないか、女性の社会進出が進んだ現代においてふさわしい制度か、といった問題提起がされました。 政府としても、パートやアルバイトの人が年収の壁を意識せずに働ける環境を後押しする「年収の壁・支援強化パッケージ」を打ち出しています。 配偶者控除の制度が、時代に沿うものとして機能しているかどうか、今一度見直すべきときが来ているのかもしれません。 これを踏まえて、次章からは配偶者控除や税制についての今後の展望を解説します。
配偶者控除の今後の見通し
配偶者控除が廃止されるかどうかは、現時点では不透明です。ただし、改正するならば段階的に別の控除制度への移行や既存の控除制度への組み込みが必要となるでしょう。 税制調査会で議論された内容は、決して安易に否定できるものではありません。実際、専業主婦世帯は共働き世帯より少なくなっています。 2021年時点では夫婦どちらもフルタイムで働く世帯の数が486万世帯と、専業主婦世帯である458万世帯を上回りました。 よって「共働きしているにもかかわらず税控除が優遇されていない」といった状況になっています。こうした不公平感を払拭すべく、配偶者控除の見直しがされているのです。 とはいえ、突然配偶者控除を廃止してしまえば、配偶者が専業主婦の夫婦世帯や低収入の世帯などの反発は避けられません。 代替制度をどのように構築するかがポイントとなるでしょう。 配偶者控除の今後としては「配偶者を養う負担を緩和できる控除制度を新たにつくる」「基礎控除や扶養控除に配偶者に関する要件を組み込む」といった方策が考えられます。 どういった方策を取るにしても「ほかの控除との整合性」「納税者間の公平性」を考えなければならず、議論がまとまるのには時間を要しそうです。