急きょ成立したTikTok禁止法、米中対立激化の契機か-中国の報復必至
この条項を支持する共和党議員にとってもう一つの障害と思われたのが、TikTokを巡り方針を転換し、禁止に反対すると3月に発言したトランプ前大統領だ。
しかし、何人かの共和党員がトランプ氏に電話をかけて説得し、最初に米事業売却を迫ったのはトランプ政権だったことを思い出させ、この法律はトランプ氏の功績を輝かせることになると主張した。結局、トランプ氏の批判は、採決の結果に大きな影響を与えるほど強いものではなかったと関係者の1人が明らかにした。
Z世代
一握りの対中強硬派が始めた不可能と思われていたことが今、議会が課した期限に向かって進んでいる。バイトダンスがTikTokアプリを米国の企業や投資家に売却する可能性もある。
だが、トランプ政権で商務次官補を務めたナザク・ニカフタール氏によると、それは当時実現しなかったし、今も実現しそうもない。「中国は全てのコードを渡すつもりはない」と同氏は話す。
バイトダンスの考え方に詳しい2人の関係者によれば、同社は中国当局がTikTokの貴重なソースコードと推奨アルゴリズムの売却に反対するとみている。そのうちの1人によると、経営陣は代わりに法廷戦術を練り、差し止め命令を得ることで即時の禁止を回避しようとしている。
TikTok事業の基盤となるテクノロジー抜きの売却という食指の動かなそうなシナリオについての議論もあるが、TikTokの価値を大きく損ねるため、買い手候補にアピールする公算は小さい。
実際に「TikTok vs 米国」という法廷闘争が始まれば、その決着はほぼ間違いなく連邦最高裁判所に委ねられることになるだろう。最高裁は、政府の安全保障上の懸念と、ユーザーとアプリ所有者双方の言論の自由や「表現上の利益」のバランスを見極めることになる。
幾つかの判例がある。米国は長い間、メディア企業やラジオ局、電話網の外国人所有を制限してきた。サイバーセキュリティーと外国情報に関して司法省の顧問をしていたアラン・ローゼンシュタイン氏は米政府の要求が「裁判に耐え得るかという質問なら、私は可能性が高いと考えている」と話した。同氏はミネソタ大学で法律を教えている。