急きょ成立したTikTok禁止法、米中対立激化の契機か-中国の報復必至
米当局は以前から、TikTokが中国政府による米国ユーザーのデータ収集やプロパガンダ拡散の手段になりかねないとの懸念を示してきた。2020年以降、トランプ政権もバイデン政権も、TikTokが米国のユーザーデータを保護するとしたセキュリティー対策を不十分だとして拒否してきたものの、禁止への機運は今年に入るまで高まらなかった。
TikTok禁止法案の提出は3月だった。その後、対外支援法案に盛り込まれるまでの間、米連邦捜査局(FBI)など連邦政府機関の高官らはこのアプリは中国が自国民に情報提供を義務付ける国家安全に関連する法律の対象で、データやアルゴリズムを中国政府に引き渡すことが求められると警鐘を鳴らした。また、TikTokが米国の政治に影響を与える可能性にも言及した。
法案は圧倒的な支持を得て下院を通過した。上院は一枚岩ではなかったようだが、こうした警告が上院商業科学運輸委員会のマリア・カントウェル委員長(民主、ワシントン州)のような懐疑派を説得するのに役立ったかもしれない。同委員長は小さな変更を加えた後、最終的に賛成票を投じた。
逆効果
イスラム組織ハマスが昨年10月7日にイスラエル攻撃を開始した後、TikTokのアプリ上でハマス支持派の動画が拡散したことも、一部議員の行動につながった。
TikTokが今年3月、米国の成人ユーザーに対し法案に反対する意思を表明するための連邦議員への働きかけを促す一連のアラートを配信すると、これをきっかけに連邦議会議事堂のオフィスに怒りの電話が殺到。
だがこの作戦は、アプリが実際に米国民の行動を操作できることを証明したことでTikTokにとって裏目に出た可能性があると、つい最近までウィスコンシン州選出の共和党下院議員として中国特別委員会の委員長を務めていたマイク・ギャラガー氏は言う。
TikTok禁止条項に、強力な競争相手を排除されれば利益を得るだろう米ハイテク企業からの組織的な抵抗はなく、条項は対外支援法案に土壇場で追加された。こうした法案の組み合わせが、ウクライナが切実に必要としている支援を危険にさらすわけにはいかないと考える懐疑派の上院議員の多くを動かした。