重要なプレーオフでも貫いたテーマは「いつも通り」。浦和ユースは清水ユースを撃破して昨季のリベンジを懸けた大一番へ堂々と挑む!
[12.6 高円宮杯プレミアリーグプレーオフ1回戦 清水ユース 0-2 浦和ユース Balcom BMW広島総合グランド] 【写真】「えげつない爆美女」「初めて見た」「美人にも程がある」元日本代表GKの妻がピッチ登場 今回の2試合が自分たちの未来を左右する、重要な180分間になることは十分すぎるほどによくわかっている。だからこそ、いつも通りに、やってきたことを変えずに、今の自分たちを100パーセントでぶつける。勝利を引き寄せるためには、それが一番の近道だと信じて、目の前のピッチでファイトするだけだ。 「もちろんレッズにプレミアを残すことが一番の置き土産になりますけど、それよりも『1試合1試合積み上げていこう』という話をしているので、今日もここで2試合を勝つということではなくて、今日勝つことだけを考えようというところですし、次もそうなると思います」(浦和レッズユース・平川忠亮監督) 盤石のゲーム運びで、プレミア復帰に王手。高円宮杯 JFA U-18サッカープレミアリーグ 2025参入を懸けたプレーオフが6日に開幕し、1回戦が行われた。Bブロックの清水エスパルスユース(東海1、静岡)と浦和レッズユース(関東3、埼玉)が激突した一戦は、浦和ユースが後半に挙げた2ゴールで勝ち切って、京都サンガF.C.U-18(関西2、京都)との2回戦(8日)へと駒を進めている。 負けたら終わりのプレーオフというシチュエーションもあって、お互いに慎重に立ち上がった中で、ファーストチャンスは14分の浦和ユース。DF田中一信(2年)が蹴った右CKから、キャプテンのDF阿部慎太朗(3年)が放ったシュートは枠の左へ外れるも好トライ。19分にも高い位置からFW会田光希(3年)がプレスを掛け、FW照内利和(3年)が枠へ収めたシュートは清水ユースGK後藤悠貴(2年)がキャッチしたものの、先制への意欲をフィニッシュに滲ませる。 一方の清水ユースは20分にチャンス到来。DF岩尾健琉(3年)のインターセプトから、MF土居佑至(2年)の枠内シュートは浦和ユースGK小森春輝(3年)が何とかキャッチしたが、以降はプレーメイカーのMF矢田龍之介(3年)のボールタッチも増加し、右からMF西原源樹(3年)、土居、MF小竹知恩(3年)が並んだ2列目のドリブルも冴え始め、少しずつ攻勢を強めていく。 それでも、浦和ユースは焦らない。「理想的には失った瞬間に奪い返したいですけど、それができない時は『まず戻ろう』と。上手く行かない時間帯をきっちり凌ごうというところでは、最低限のところはやってくれました」(平川監督)。阿部とDF田中義峯(1年)のセンターバックを中心に、相手のアタックを1つずつ凌いでいくと、40分にはビッグチャンス。MF井上大輝(3年)のパスを引き出した照内が打ち切ったシュートは、しかし左ポストにヒット。前半はスコアレスで45分間が終了する。 後半12分。試合を動かしたのはトップチーム昇格が内定しているストライカーだ。高い位置でMF和田直哉(2年)がボールを奪い返すと、井上が打ったシュートは後藤が弾いたものの、こぼれは照内の足元へ。「ダイレクトで打とうと思ったんですけど、ちょっと後ろ側だったので、1回トラップしてからという感じで判断を変えました」と冷静に打ち込んだシュートは、豪快にゴールへ突き刺さる。 「去年はこういう舞台で外していたので、前半のチャンスは外しましたけど、自分の中でそこから立て直すことができてゴールも獲れたので、去年より成長したのかなと思います」と笑ったエースの一撃。浦和ユースが1点のリードを奪う。 一気呵成。15分。DF横山海斗(3年)のスローインから、井上が中央を力強く運んで左へ。股抜きでマーカーを剥がしたMF深田京吾(2年)が左足を振り抜いたシュートは、右スミのゴールネットへ吸い込まれる。平川監督が「いつ出てもパフォーマンスは高いですし、個で仕掛けていくところがもう少し欲しかったので」と後半開始から投入した“ジョーカー”が一仕事。点差が開く。 清水ユースは小さくないビハインドを追い掛ける展開に。28分には左からDF岩永京剛(2年)が蹴ったCKに、ファーへフリーで飛び込んだMF針生涼太(2年)のヘディングは枠の右へ。31分にも矢田、小竹と繋いで、DF石川成希(3年)がシュートまで持ち込むも、ここは田中義峯が身体でブロック。なりふり構わず懸命に攻め込みながら、1点が遠い。 ファイナルスコアは2-0。「戦うところ、球際、切り替え、運動量というのは常に求めていますし、清水の時間帯もありましたけど、全員がハードワークして、誰かがミスしたら、誰かが戻ろうという話はしていたので、そこは90分通してやってくれたなと思っています」と平川監督も手応えを口にした浦和ユースが逞しく勝利を収め、2回戦へと駒を進める結果となった。 キャプテンを務める阿部が興味深いことを教えてくれた。「いつも試合前に自分たちのテーマを決めるんですけど、今日は『いつも通り』と『変えない』がテーマでした。自分たちが積み上げてきたものに自信を持って、いつも通りやれば絶対に勝てると話していましたし、そこが表現できたのかなと思います」。 とりわけ奮闘が際立ったのは、相手のトップ昇格が決まっている両ウイングに対抗し続けた、右に横山、左に田中一信を配した両サイドバック。「プリンス関東にもウイングにものすごいタレントがいっぱいいるので、それに対して1年通してやってきたところが今日は出ましたね。1対1の守備で言えば、レベルが1つ2つ上がったなというところで、今日のこういう選手を相手にしても対等にやれますし、こういった試合が良い経験になって、また成長に繋がるといいなと思います」と平川監督。1年間を掛けて積み重ねてきた『いつも通り』が、このプレーオフの舞台でも過不足なく発揮されたということだろう。 4年ぶりのプレミア復帰まであと1勝に迫ったが、浦和ユースは昨季のプレーオフでもその1勝に届かず、涙を呑んでいる。もちろん彼らがその記憶を忘れているはずもない。 「今年1年はずっとここで勝つための準備をしてきていますし、去年の悔しい想いはみんな持っていると思います。ここに来ていない人も含めて、今までもみんなで戦ってきていますし、裏でいろいろな準備をしてくださるスタッフの方々もいるので、そういう人たちの分まで戦って、勝利を届けようという話は全員でしていますし、最後に絶対勝って、プレミアリーグに復帰して終わりたいです」(照内) 「1試合1試合が本当に大事だということは、去年もプレーオフのピッチに立って知っているので、今日の試合が終わった後も『ここは通過点だぞ』ということは全員で確認しました。もっとこのチームでサッカーをやりたい寂しさもありますけど、自分たちがしっかり昇格して、後輩たちに来年はプレミアでプレーさせてあげたいので、あと一戦集中して、自分たちのためにも、チームのためにも勝利を掴み取りたいと思っています」(阿部) 来季からのFC琉球OKINAWAの監督就任が発表されている平川監督にとっても、次の一戦はこのチームで戦うラストゲームだが、「もちろん来年チームを離れることは伝えていますけど、僕が何かを置いていくとか、そういう感じではないですね。彼らの成長にいかに繋がるかだと思っています」と冷静に『いつも通り』の姿勢を崩さない。次戦への想いを問われても、この人らしい答えが口を衝く。 「去年もこの先で負けたということで言えば、自分たちが悔しい想いをしたここにまた戻ってきて、昇格を果たそうという話をしていましたので、いよいよそのチャンスが来たというところを踏まえて言うと、もう楽しんでほしいなというところですね。誰かが用意してくれたわけではなくて、彼ら自身が1つずつ積み上げてこのステージまで来たので、彼らには楽しむ権利がありますし、そこで精一杯楽しんでほしいことを伝えられたらなと思っています」。 みんなで築き上げてきた2024年の浦和ユースの集大成。最後の1試合も、彼らは『いつも通り』を貫いた先に待っているものを信じて、最高の舞台を楽しみながら、最高の結果を手繰り寄せる。 (取材・文 土屋雅史)