2025年も日銀「利上げ継続」なら住宅ローン金利はどこまで上がる? 専門家が「カギを握るのはトランプ新大統領の目玉政策」と指摘する理由
日銀の利上げが住宅ローンに及ぼす影響
利上げが実施された場合、変動金利型の住宅ローンを組んでいる世帯では返済負担が増大する。先の予想通りに政策金利が0.5% 引き上げられる場合、住宅ローン金利も同じ幅で上昇する可能性が高い。その場合、返済負担の増加額は平均的な借り入れ世帯で年6万円、このうち20~30歳代の若年世帯では年9万円と計算される。これまでの低金利環境で世帯あたりの住宅ローン借入額は増える傾向にあり、若年世帯の平均借入残高は全世帯平均よりも高い3,000万円ほどに達している。さらに変動金利を選択している世帯が全体の7割近くにのぼり、日銀の利上げが返済負担に及ぼす影響はかつてよりも大きくなっている。 若年世帯の増加額が平均よりも高いのはそうした理由からだ。 多くの住宅ローン契約では、金利が5年間据え置かれる「5年ルール」が設定されているため、金利が上がったからといってすぐに返済額が増えるわけではないが、わが国が「金利ある世界」へ戻るならば、中長期的に返済額が増えることに間違いはない。 もちろん、返済額が増えたとしても、賃金が十分に上がれば、返済の負担感はその分軽くなる。昨年の春闘では、定期昇給込みで5%ほどの賃上げが実現した。住宅ローン借入世帯の平均的な可処分所得は600万円弱であることを踏まえると、仮に賃金が5%上がれば、単純計算で所得は年30万円弱増加することになる。物価高で日々の生活費がかさんでいることを考慮しても、世帯平均でみれば、金利上昇による返済負担の増大は所得の増分でカバーできる計算になる。
米国の物価が上がると、日本の金利上昇につながる可能性
今年の春闘では、連合(日本労働組合総連合会)が大手を含む全体で5%以上、中小の労働組合で6%以上の賃上げを求める方針を示している。経営サイドでも、経団連(日本経済団体連合会)が賃上げの勢いを社会全体に波及させるとの方針を掲げている。賃上げ機運は相応に強いと考えられ、仮に今年も前年並みの賃上げが実現すれば、日銀の利上げによる家計の負担増はある程度軽減されよう。 一方で、今年 は米国でトランプ政権が誕生するなど不透明な要素も大きい。変動金利型で住宅ローンを組んでいる世帯にとっての重大なリスクは、所得が伸びないにもかかわらず、日銀が予想以上に金利を引き上げることである。トランプ次期大統領が公約に掲げる政策には、そのような事態を招きかねない政策が含まれている。とくに、米国の物価が上がると、わが国の金利上昇につながる可能性がある点には注意が必要である。 たとえば、トランプ氏は海外からの輸入品に関税を課す政策を提示しており、「就任初日に中国に10%、カナダとメキシコに25%の追加関税を課す大統領令に署名する」旨の意向を明らかにしている。輸入品への関税引き上げは、消費税引き上げと同じ効果を持ち、物価が上がりやすくなる。米国では、中国、カナダ、メキシコからの輸入額が約200兆円と巨額にのぼっており、公約どおりに関税が引き上げられると、米国の物価が大きく上昇する可能性が高い。さらに、トランプ氏は不法移民の排斥も強く主張しており、これも米国の労働力が削減されることで人手不足を招き、米国の賃金や物価を押し上げる。