アメリカ大統領選の投票行動つかめぬZ世代 ハリス、トランプ両陣営も取り込みに躍起
オバマ時代に育ったZ世代 候補者の人種を旧世代ほど気にしない
アメリカの政治にとって人種は常に大きな課題であり続けた。 かつて黒人は差別撤廃の法律制定を目指し、苦難の末、1963年に公民権法の制定にこぎ着けた。次いで、その法律が順守される環境を整え、かつマイノリティーの躍進のためにマイノリティー政治家の擁立に努力し、2009年に米国史上初の黒人大統領バラク・オバマが誕生した。 一方、人種マジョリティーの保守派は、それによって自身の優位性や既得権が損なわれることを極度に恐れた。かつてトランプが「オバマはケニア生まれで大統領の資格がない、出生証明証を見せろ」と言い続けたのがその現れだ。 しかしオバマは2期8年、2009年から2017年にかけて大統領を務めた。つまりZ世代は民主党支持者であれ、共和党支持者であれ、物心ついて初めて認識した大統領が黒人だった。これは旧世代の多くが気付いていなかった事象だが、若い世代が持つ大統領のイメージを大きく変えている。Z世代がカマラ・ハリスの人種民族(インド系とジャマイカ系黒人のミックス)をさほど意に介していない理由だ。 しかし、旧世代であるトランプは8月に行われた黒人ジャーナリスト協会でのインタビューで「カマラをインド系だと思っていた、黒人とは知らなかった」、ハリスが政治目的で「黒人に変わった」と発言している。こうした人種偏見は保守派の高齢層には響くかもしれないが、Z世代の多くには効果がなく、わけても人種ミックスの有権者に非常にネガティブな思いを抱かせた。
Z世代が抱える経済や将来への不安 ライフステージは様々
Z世代についてはメディアによる選挙の動向だけでなく、多くのマーケティング企業もリサーチをしている。若者は常に流行を生み出し、消費傾向を決定付ける層であるからだ。しかしリサーチの結果を読み解くのはなかなか難しい。 Z世代は人口3億3000万人のアメリカで6900万人と全人口の約20%を占めるが、多様なグループと言える。全米の人種比率は年々多様化しており、Z世代は白人とマイノリティーがおよそ半々となっている。マイノリティーの中ではその半数がラティーノだ。 一方、多様化と相反する現象として、アメリカは世代に関係なく、州や地域によってライフスタイルが大きく異なる。さらにどの州であっても「都市部」「郊外」「田舎」のどこに住むかによって政治志向、支持政党も強く影響されることから、この部分についてはZ世代といえども投票傾向は比較的、推測しやすいようにも思える。 ただし、Z世代の構成年齢は12~29歳であり、中高校生、大学生、社会人を含んでいる。この3グループの精神的な成熟度、社会への関心度、経済活動の度合いはかなり異なる。さらに多数は独身のはずだが、出産して子育て期に入っている層もあり、ここでも経済に求めるものに違いがあると思われる。 多くの調査でZ世代は現在のアメリカ経済、および自身の将来に不安を抱いているとされている。この傾向は一つ上のミレニアル世代から始まっており、自分の世代が両親の世代より豊かになるとは思えないと語っている。 シカゴ大学の最新の調査によると、Z世代のうち成人である18~29歳が「アメリカが直面している問題」として、経済成長、所得格差、貧困を他の世代よりも憂えている(経済成長に関してはミレニアル世代がさらなる不安を抱えているが)。 冒頭に挙げた他社のリサーチにある「進歩的な政策」にあたる銃規制、環境・気候変動、中絶問題、ガザ問題については他の世代よりも憂えているとする人数が少ないか、もしくは他の世代と同様に低い関心を示している。