アメリカ大統領選の投票行動つかめぬZ世代 ハリス、トランプ両陣営も取り込みに躍起
トランプを強力に支援する起業家イーロン・マスク
投票日が迫る中、両候補ともに若者にアピールするために、若いセレブによる支援がのどから手が出るほどに必要としている。 トランプがJDヴァンスを副大統領候補としたのはヴァンスの生い立ち、それによる白人労働者層へのアピールが理由だが、ヴァンスが現在40歳(1984年生)のミレニアル世代であることも理由の一つだった。しかし、高齢のトランプと若い有権者の橋渡し役を担うはずだったヴァンスは失言を続け、SNSにヴァンスをからかうミームがあふれた。 中でも最大の失言は、ハリスに向けた「キャットレディー」だった。キャットレディーとは、いわゆる適齢期を過ぎても結婚せず、実子を持たない女性を「飼い猫を異様に可愛がり、社会と隔絶した孤独な変わり者」といったニュアンスで揶揄する言葉だ(ハリスは結婚しており、継娘、継息子がいる)。 ヴァンスの失言とAIによるフェイク画像が、Z世代にも絶大な人気を持つスーパースター、テイラー・スウィフト(34歳、1989年生、ミレニアル世代)の「ハリス支持」発信を引き出してしまった。 9月10日、スウィフトは愛猫を抱いた写真とハリス支持のメッセージをインスタグラム(フォロワー数2億8300万)に投稿し、文末に「子ナシのキャットレディー」と署名した。 スウィフトはメッセージの中で、自身がトランプ支持者として描かれたAI画像がトランプのSNSサイトに投稿されたこと、およびフェイク拡散の危険性についても触れている。この投稿はわずか18分で120万件の「いいね」を獲得。加えて、アメリカは有権者自身が有権者登録を行ってから投票する仕組みとなっており、スウィフトがメッセージとともに掲載した有権者登録サイトには24時間で約34万人が訪れた。 役目を果たせなくなったヴァンスと入れ替わりにトランプのチアリーダー役として現れたのがイーロン・マスクだ。 マスクは53歳(1971年生)、ミレニアル世代の一つ上の「X世代(1965~1980生)」だが、テスラ、スペースXといったテクノロジー企業CEOとして時代を先取りする人物であり、ツイッターを買収して「X」としたことも若者は覚えている。マスクは公式にトランプ支持を表明する以前の8月に、Xにてトランプとの2時間にわたる「ライブ会話」を行い、何十万人ものXユーザーが参加した。 そのマスクが10月5日にトランプの選挙集会に初めて登場した。場所は激戦区ペンシルベニア州の、7月にトランプが耳を狙撃された同じ会場だった。 トランプに紹介されたマスクは黒いMAGA帽(MAGA=トランプの選挙スローガン、"Make America Great Again"の頭文字を取った造語)をかぶってステージに躍り出て両手を上げて高く跳び上がり、「私は単なるMAGAではなく、ダークMAGAなのだ」とささやいた。 マスクはそもそも奇矯な言動で知られるが、このジャンプのシーンはミームとなり、コラージュ加工されたバージョンも出回った。 なお、マスクは単なるトランプ支持者ではなく、トランプの選挙活動に多額の寄付金を出しており、トランプは当選すればマスクを政府効率化委員会のリーダーに起用すると発言している。