アメリカ大統領選の投票行動つかめぬZ世代 ハリス、トランプ両陣営も取り込みに躍起
Z世代はデジタル・ネイティブ 各陣営のあの手この手のSNS戦略
Z世代(1997~2012生、12~29歳)の大きな特徴として知られるのは、「完全デジタル世代」「コロナ禍によるリモート・スタディー世代」「学校での銃乱射世代」、加えて「経済的な不安を抱える世代」であることだ。 Z世代に一つ先駆けた「ミレニアル世代(1981~1996生、28~43歳)」がSNSを創り上げ、Z世代の多くは小中学生時代にスマートフォンを手に入れ、SNSとともに育った。 そのSNSも旧世代のようにフェイスブックやツイッター(現X)ではなく、Z世代はインスタグラム、TikTokと短い動画が主流だ。TikTokにはニュース・インフルエンサーもおり、若者は大統領選の情報もTikTokから得ている。 他にもYouTube、スナップチャットなどメッセージ・アプリ、チャットルームのディスコードなどを含め、いくつものSNSを頻繁に切り替え、それぞれごく短時間の閲覧から自分に有用な情報を吸収している。 これが理由で、ハリス陣営もトランプ陣営もTikTokを若者へのアピールとして使っている。 ハリス(フォロワー数600万)は、米CBSテレビの硬派の報道番組「60ミニッツ」のインタビューで政策を語るシーンだけでなく、カジュアルな深夜トーク番組に出演し、缶ビールをすすって視聴者を笑わせたシーン、巨大ハリケーンによって甚大な被害を受けたノースカロライナ州を視察するシーン、大学や高校を訪れて若者と語り合ったり、「I love Kamala!」と駆け寄る幼い女の子をハグしたりするシーンなど硬軟取り混ぜた動画をポストしている。 ハリスは今年10月で60歳(1964生)を迎え、「団塊世代(1946~1964生)」の最後年の生まれだが若々しく、文化的には次のX世代(1965~1980生)だとされている。 一方、トランプ(フォロワー数1180万)はTikTokでは男性にアピールする"男性性"を押し出している。 自身の選挙集会の会場を威勢のいい音楽をBGMに歩く姿も目立つ。会場の売店からの スナックの箱を支持者に向け、放り投げている。被災者へのボランティア事務所で支援グッズを詰める作業を手伝うハリスと対照的な絵柄だ。 ただし、トランプは78歳(1946生)と、ギリギリで戦中派の「サイレント世代(1928~1945生)」から外れているものの、「団塊世代(1946~1964生)」初年の生まれだ。TikTokにおけるZ世代との直接対話は若手のトランプ支持者が担っている。 現在30歳(1993生)、ミレニアル世代であるチャーリー・カークは生え抜きの保守活動家だ。18歳で若者向けの保守団体「ターニング・ポイントUSA」を共同設立し、以後、自身の保守派ラジオ番組やポッドキャストで人気を博している。 カークはTikTok(フォロワー数340万)で、Z世代のラティーノ青年からの質問「トランプの国境政策は外国人嫌悪なのに(人種民族マイノリティーである自分が)トランプに投票する理由とは?」に答えるものがある。カークは「ホームレスが君の大学の寮に押し入ったらどうする?」「つまみ出すだろう?」「アメリカ人として、我々の国に押し入ってきた者(不法移民)は追い返さねばならない」と畳み掛け、青年から「トランプに投票する」を引き出すことに成功している。