アメリカ大統領選の投票行動つかめぬZ世代 ハリス、トランプ両陣営も取り込みに躍起
指摘されるZ世代のメンタルヘルス問題
Z世代の大きな特徴として、成長期の極めて特有な社会事象の体験がある。連発した学校での銃乱射事件と、コロナ禍による長期のリモート・スタディーだ。 学校での乱射事件については2012年にコネティカット州のサンディーフック小学校で20歳の男に26人が殺害され、うち20人が6、7歳の児童であったことから全米に大きな衝撃を与えた。 以後、学校での乱射事件はほぼ毎年起こり、2018年にはフロリダ州パークランドのマージョリー・ストーンマン・ダグラス高校にて生徒ら17人が殺害される事件が起きている。同校の生徒でこの事件のサバイバーであるZ世代のデヴィッド・ホグ(2000年生、24歳)は銃規制活動家となり、現在も活動を続け、メディアにも登場している。 2020、2021年にかけてはコロナ禍で学校閉鎖となったために乱射事件も激減したが、2022年にはテキサス州ユバルディのロブ小学校で子ども19人を含む21人が射殺される事件が起きている。 アメリカのZ世代は小中高校時代に火災訓練ならぬ、乱射避難訓練を受けている。警報が鳴ると生徒は教室の照明を消し、ドアの鍵を閉め、机の下などに隠れ、警報解除を待つ。皮肉なことに2021年1月6日にトランプ支持者が米国連邦議会議事堂を襲撃した際、議事堂で働いていたZ世代は乱射訓練で学んだ手はずにより、難を逃れたという。 コロナ禍については、2020年3月あたりから全米各州で次々と学校が閉鎖され、中には1年半から2年近く自宅でのリモート・スタディーとなった生徒もいる。この間、子供たちは勉強だけでなく、人格形成の場でもある学校から切り離され、家庭によっては親を含む親族の感染、入院、死亡、または失業、貧困化、さらには後日のホームレス化も体験している。中には自室に閉じこもってSNSにはまり、そこで感化されて自らが乱射犯となった10代もいた。 成長期のこうした体験から、Z世代の多くが内省的、さらにはメンタルヘルス問題を抱えているとされ、最近になってようやくその問題が報じられ始めている。 それでもZ世代は将来を考え、政治に参加し、大統領選に投票する。その結果は、開票まで誰にも予測できないにしても。
堂本かおる