食品メーカー上期業績、上位30社中14社が減益・欠損
上場食品・酒類メーカーの24年度上期業績が出揃った。売上高30位以内の減益・欠損企業は14社に広がり、業績停滞が色濃くなっている。実質賃金の伸び悩みを背景に、増えるコストの価格転嫁が追いついていない状況だ。国内事業が失速する中、伸び盛りの海外に収益を依存する構造が鮮明化しつつある。 【表を見る】上場食品カテゴリー売上高31~60位の24年度上期決算と通期予想
価格転嫁の遅れが鮮明
増益が8割強を占めた前上期・通期から商況が一転。コストプッシュが急加速した22年度上期の水準(減益・欠損17社)に迫る落ち込みとなっている。 売上高31~60位でも減益は11社を数え、値上げとコロナ収束で回復した前期から早くも反落した。 減益は畜肉、水産、油脂、チョコレートなどのセグメントで顕著にみられる。食肉関係では相対的に安価な鶏肉でも飼料の高止まりなどの影響が広がっている。ハム・ソーセージの値上げは過去3年で6回にもわたるが、コスト高をカバーしきれない企業も少なくない。 水産物も養殖の飼料高、温暖化による生育不良で苦戦。植物油・小麦粉で穀物相場の軟化が減収圧力として働く一方、オリーブオイル、チョコレート、レギュラーコーヒーなどは原料の暴騰が企業収益を激しく圧迫した。不二製油の大幅な増収減益はチョコレートの価格改定、事業赤字に負うところが大きい。 これら原料需給の影響に加え、販促などのマーケティングコストの増加やDX投資、人件費の高騰を減益要因に挙げる企業も多い。 大幅増益を達成したメーカーは海外比率の高い企業に限られる。主力集中と円安による為替差益の増加で潤った酒類大手がその代表例だ。菓子・外食は過去最高のインバウンドの恩恵を受けているが、日本人向けの居酒屋業態などは依然として十分な回復を示していない。 国全体で経済の好循環を促すには、物価上昇を上回る賃上げが不可欠だが、実質賃金が前年を上回ったのは6、7月のみ。8月以降は3ヵ月連続のマイナスで、国内消費は弱含みの方向にある。 年明け以降も消費・コスト環境の好転材料は乏しく、食品メーカーにとってかじ取りの難しい局面が続きそうだ。
日本食糧新聞社