<なるほど!外交・安全保障>中国の海洋進出の背景にある「考え方」とは?
「海洋国土」: 排他的経済水域も“国土”
中国は、領海はもちろん、排他的経済水域(EEZ)や中国大陸から自然延長的に広がっている大陸棚も含めて“国土”として捉えています。これが「海洋国土」という概念です。この概念は、2010年、『解放軍報』の中で紹介されました。海洋国土は、「国家管理領域」とも称されます。つまり、進出・占拠した岩礁は、中国にとって国家が管理する“国土”の一部なのです。ちなみに、南シナ海における中国の“国土”開発の実態については、米国の政策研究機関である戦略国際問題研究所(CSIS)が“ASIA Maritime Transparency Initiative”(AMTI)というプロジェクトを立ち上げ、多くの写真や解説を添えて公開しています。例えば、南シナ海の中央に位置する「ファイアリー・クロス礁」。この岩礁では浚渫や埋立てが急速に進み、大型船が接岸できる港や大型飛行機が発着できる飛行場まで建設されています(図表3参照)。
中国の「考え方」を踏まえた日本の対応とは?
中国の海洋進出は、壮大な海軍建設計画と独特な国境観、そして特異な国土観に基づいて行われています。2015年5月、中国は国防白書を発表しました。白書には、「海上の軍事闘争とその準備を最優先」するという戦略方針が明記されています。中国が「考え方」を大きく転換する顕著な兆候は見出せません。一方、中国が目指す環境を受け入れることは、繁栄と存続を海洋に依存している日本にとって容易なことではありません。それでは、中国の深遠な思惑を踏まえた上で、私たちには何ができるのでしょうか? (廣瀬泰輔/国会議員秘書)
---------- 広瀬泰輔(ひろせ・たいすけ)。国会議員秘書。元海上自衛官。元米戦略国際問題研究所客員研究員。防衛大学校卒。松下政経塾卒。日本財団国際フェローシップ(2期)。論稿 “Japan’s New Arms Export Principles: Strengthening U.S.-Japan Relations”(CSIS、2014) 記事に関連するおススメ情報 【写真】CSIS/AMTI 南シナ海において実効支配を強める中国の活動を衛星写真などと共に紹介 【動画】CNN/“High stakes surveillance over the South China Sea” 南シナ海において実効支配を強める中国の活動を音声記録などと共に紹介