アイドルも「休んでもいい」。心身不調を経験、元アンジュルム・和田彩花さんが訴える業界の意識改革 #令和に働く
ジャニーズ事務所(当時)を創業したジャニー喜多川氏(2019年死去)による性加害が社会問題化して、1年が過ぎた。旧事務所からアイドルらを引き継いだ新会社が本格始動したが、スターを夢見る子どもたちをさまざまな形で追い込みかねないアイドル業界の土壌を変える機運は高まっていない。国連人権理事会の作業部会は、アイドル産業では若いタレントがプロデューサーの要求に従わざるを得ない契約を強いられているなどと指摘。こうした環境が加害者側を罰しない風潮を生み出し「性暴力やハラスメントを助長している」としている。 人気グループ「アンジュルム」元メンバーの和田彩花さん(29)は、「ハラスメントのようなことに気付きにくい」業界の問題を指摘し、意識改革を訴える。法規制が進むアメリカのエンターテインメント業界の児童労働に詳しい琉球大准教授の白木敦士さんは、日本の構造的な課題を挙げ、「『次の喜多川氏』が出現しないとも限らない」と警告している。(共同通信=前山千尋、辻将邦)
▽15歳でデビュー。自分探しの時間もなく「プロデュース」されることで失う主体性
アンジュルムの前身「スマイレージ」からのメンバーだった和田彩花さんは親の勧めで、アイドルになるためのレッスンを小学校低学年から受け始めた。住んでいた群馬県から東京へ通い、同世代の子どもたちと訓練を受けた。学校のクラブ活動の延長のようで楽しかったが、恥ずかしがり屋で「辞めたい」と思いつつも、そう言い出せないまま。気付けばデビューが決まっていた、と振り返る。 15歳でメジャーデビューすると、自分の存在をどう表現するのかを悩むようになり、自分というものが分からなくなった。いつも笑顔で気遣いをする「女の子らしさ」の象徴のようなアイドル像を求められることもあり、モヤモヤしたという。 「自分を探していく成長期にアイドルとして誰かにプロデュースされることで、主体性を失いかねないと今は感じます。自分自身を深める時間を奪われる一方、周囲からはアイドルの輝かしい部分を評価される状況は苦しく、負荷がかかります」 そうしたモヤモヤが晴れるきっかけになったのは大学への進学。興味を持っていた美術史を学び、アイドルと学生という「二つの世界」を行ったり来たり。自分の価値観を探り出していくと、「自分自身であること」を我慢する必要はないと思えるようになった。