アイドルも「休んでもいい」。心身不調を経験、元アンジュルム・和田彩花さんが訴える業界の意識改革 #令和に働く
× × アイドルやその卵たちが直面するかもしれない問題に、業界はどのように対応していけばいいのか。アメリカ・エンターテインメント界の子どもの労働に詳しい琉球大准教授の白木敦士さんは、日本の芸能界に対する法規制や構造的改革を求め、次のように語った。 × ×
旧ジャニーズ事務所の性加害問題は、故ジャニー喜多川氏個人の異常性ばかりが注目されがちですが、芸能界と児童労働を巡る構造的な課題にも目を向けなければなりません。 まず精神的に未発達な子どもが大人に囲まれた特殊な環境で受けるストレスを理解する必要があります。子どもは、自身のストレスを把握して仕事量を適切に加減するのが難しい。さらに自己承認欲求を制御する力も弱く、「夢のためなら」と性加害のような不当な要求を受け入れ、正当化してしまうこともあります。 子どもを守るのは本来、親の役目ですが、芸能界では子の成功が親の虚栄心を満たしたり、生活水準の向上につながったりするので、親が子どもの幸せや安全を最優先にして判断するのは困難です。ひとり親家庭などで子どもが一家の家計を支えるケースでは、その傾向がより強まります。 また芸能界の仕事は他業種と比べにくく、親も「適切な労働か」を判断できません。きらびやかなイメージがあるため、社会が不祥事に目を向けにくい構造もあります。
米国もかつては同じ状況が見られました。しかし現在は、多くの州でエンターテインメント業界の児童労働について法的な規制があります。 内容は州ごとに異なります。ニューヨーク州では、 ①子どもを「パフォーマー」として働かせる際に事業者に加え、親も州の許可を得る必要がある ②子どもが芸能活動で得た収入の一定額は信託口座に入れ、成人するまで親も子も自由に使えない ③仕事場には、親または、親側が選んだ「子どもの責任者」が立ち会う義務がある ―など。いずれも子どもの福祉と健全な発達を守るのが目的です。 米国のような法規制がなく、芸能事務所の力が強い日本では「次の喜多川氏」が出現しないとも限りません。だからこそ法制度によって、子どもの福祉を包括的に守っていく取り組みが重要です。 旧ジャニーズの問題は、ビジネスと人権の観点から、未成年者を使った日本のコンテンツにリスクがあることを世界に示しました。違法な労働力が使われていないと明らかにすることは、芸能界の首を絞めるのではなく、発展に不可欠です。犯罪の防止は当然として、子どもの学習時間の確保などさらに高い水準を法によって達成することが将来的に日本の強みになるはずです。
× × わだ・あやか 1994年群馬県生まれ。アイドルグループ「アンジュルム」の元メンバー。2022年、雑誌「エトセトラ」でアイドルの働く環境などについて考える特集を編集した。 × × しらき・あつし 1986年名古屋市生まれ。専門は米国家族法、国際民事訴訟法。弁護士(日本、アメリカ・ニューヨーク州)。 ※この記事は、共同通信とYahoo!ニュースによる共同連携企画です。