アイドルも「休んでもいい」。心身不調を経験、元アンジュルム・和田彩花さんが訴える業界の意識改革 #令和に働く
▽「ファンが待っている」根性論が支配、でも突然涙が・・・。逃げてと言ってほしかった
メンバーだったアイドルグループの人気には浮き沈みもあり、全国のライブハウスを回っている時期は心身の不調も続いた。ファンが待っているから、とにかくステージに立たないと―。 「休みたいとは言えなかった。そうするのが当たり前の先輩の姿を見ていたこともあり、根性論に支配されていました。そもそも休まず働くことはすごいこと、売れていることという感覚もあったと思う」 アイドルをしながら、メンタルケアのために病院に行くのはハードルが高く、選択肢にもなかった。精神科だけでなく、婦人科なども自分の情報がどこで漏れるかは分からず、万が一漏れたら、メンバーやファンにどう思われるだろうか、という不安があった。 精神的な負担が大きくなり過ぎて、現場で突然涙が出てくることもあった。でも周囲の誰も声をかけてはくれなかった。「当時を振り返ると、『逃げていいよ』と言って、一緒に逃げてくれる人が欲しかった」。最終的にはメンタルの問題を自分で抱えきれなくなったことが、24歳でグループを卒業する理由の一つにもなった。
▽アイドルも不調を口に出していい
一人で活動をするようになってからアイドルの「労働」について考えるようになった。 「アイドルはファンの応援や批判が行動の基準になることがある。それに(アイドル業以外の)社会との接点も減るため、ハラスメントのようなことがあったとしても気付きにくいという状況もそもそもあるかもしれません」。そのような状況では、アイドルの働く環境を良くしていこうと、本人が声を上げるのは簡単ではないだろう。 精神的に苦しかった当時「労働組合があったら?」と振り返って考えた。でも当時そうしたことは聞いたことがなく、相談することはできなかったと思う。労働組合も大事だが、むしろ今は後輩に会うと、「休んでもいい」と伝えている。労働組合といった仕組みのもっと手前にある、そもそも自分の不調を自覚できたり、不調を口に出してもいいと思えたりするように、スタッフを含めて、アイドルの世界も小さな意識改革を積み重ねていくことが「ヘルシーな空気」につながるのではないか―。 そうした輪を広げたいとの思いからメディアのインタビューなどを受けている。「アイドル同士でお互いに共感して救われたり、情報交換することで心強く感じたりできると思います」