カビによって米国でヘビが減っている? 外来種が原因か
交通網の発達により、現在は多くの人々がさまざまな国へ短時間で移動できるようになりました。しかしながら、人間の意図しないところでさまざまな生物が、交通機関に「タダ乗り」「相乗り」をして、「招かれざる客(生物)も外来種」として来るようになってきています(※)。日本で「外来種問題」としてニュースになるのは、日本にとっての外来種がほとんどですが、今回はアメリカにおける外来種問題を紹介します。その外来種とは、目に見えない小さなカビです。後述しますが、この話は「対岸の火事」ではありません。
「ヘビカビ症」とは?
近年アメリカでは、「ヘビカビ症」(原文ではSnake Fungal Disease、筆者和訳)が流行しています。アメリカ東部のフロリダからニューハンプシャー、そしてアーカンソーやミネソタでも発見されています。この病気は、真菌(カビ)の1種(Ophidiomyces ophiodiicolaが原因と考えられている)がヘビに感染することで、最悪の場合死にいたるものです。 さらに、このヘビカビ症の恐ろしいところは、さまざまなヘビに感染が認められる点です。キタミズベヘビ(Nerodia sipedon)、ヒガシレーサー(Coluber constrictor)、ラットスネーク(Pantherophis obsoletus species complex)、ミルクヘビ(Lampropeltis triangulum)、ガラガラヘビ類(Crotalus horridus、Sistrurus catenatus、Sistrurus miliarius)と複数のヘビ種から感染報告があります。人間でも、イヌやコウモリなどの動物から病気をうつされることがありますが、種を超えて感染するというのは対策を考える側からするとやっかいです。
写真のように、感染したヘビ類は皮膚炎を引き起こします。写真のヒガシラットスネークでは、ヘビカビ症の菌糸が目の中まで(ヘビ類は透明の鱗に目が覆われており、まぶたはない)侵入し、目が真っ白になっています。キタオミズベヘビでは、炎症が体中に認められます。