カビによって米国でヘビが減っている? 外来種が原因か
ペットトレードや観光地化が原因?
このヘビの病気は、2006年以降から報告が増加しており、2013年4月にはついにアメリカの国立野生動物保護センター(National Wildlife Health Center、筆者訳)が警鐘を鳴らしました。 いったいこの病気が「いつ」「どこから」「どのように」もたらされたのかはよく分かっていません。しかしながら、アメリカでも日本と同じようにヘビをはじめ「エキゾチックアニマル」がペットとして一定の需要があります。ペットトレードによって、世界中のヘビが輸出入され、ヘビカビ症がもたらされた可能性が考えられます。 また、エコツーリズムの流行によって、人間が自然環境の中によく行き来するようになったり、自然のそばに街ができたりすることによって、その自然環境にはなかったヘビカビ症がもたらされた可能性もあります。いずれにせよ、人類活動がヘビカビ症を蔓延させてしまった可能性が高いようです。
ガラガラヘビは壊滅的なダメージ
一体全体、このヘビカビ症によって、ヘビがどのくらいのダメージを受けて、どのくらいの数が減少しているのかは、まだ分かっていません。多くのヘビ類では野生の個体数調査などが行われていないからです。また、そもそもヘビ類は隠遁性の高い生き物なので調査をするにしても難しいということもあります。しかしながら、例外的に個体数の変動を調べられていたニューハンプシャー州のシンリンガラガラヘビ(Crotalus horridus)では、ヘビカビ症によって2006年のたった1年間に50%も減少したことが報告されています。
ヘビカビ症は「対岸の火事」ではない?
日本は、世界有数のペット大国で、爬虫類だけでも年間30万匹が世界中から輸入されています(2011年、環境省)。その中には、冒頭で紹介したヘビカビ症に感染例のあるヘビ種も含まれています。日本にヘビカビ症が入ってくる可能性も、逆に日本発のヘビカビ症を世界中にばらまいている可能性も捨てきれません。 では、ヘビが減るとどういった悪影響が出るのでしょうか? 先のシンリンガラガラヘビのように、個体数の調査が定期的になされているヘビでさえ、その減少による生態系への影響はよく分かっていません。それは、前述したようにヘビは生態的な調査が難しい動物であるからです。しかしながら、世界中にいる3500種のヘビは例外なく捕食者です。ヘビがいなくなれば、それまでヘビによって捕食されていた動物が増えてしまうでしょう。特に多くのヘビ類はネズミなどを補食します。ネズミが増えれば、農作物への被害が拡大したり、感染症が蔓延したりするかもしれません。 ヘビカビ症の恐ろしさは、もしかしたら「生態系の中での役割は大きいと考えられるが、その実体がまだつかめていないヘビをどんどん死なせていること」なのかもしれません。ヘビが減少して起こるであろう悪影響は、我々の科学ではまだ解明が難しいのです。