情報発信を通じて「最高の老後」の実現に貢献する老年科医・山田悠史先生の取り組み
アメリカ合衆国(以下、米国)やカナダの高齢者診療の現場において標語とされている「5つのM」。これは臨床の現場で働く医療者をはじめ高齢者診療を学ぶ研修医や医学生にとって重要な指標であるとともに、一般生活者にとっても健康でよりよい老後を過ごすため必要不可欠な視点です。米国・マウントサイナイ大学病院の老年医学・緩和医療科でアシスタントプロフェッサーを務める山田悠史先生は、多くの人に「最高の老後」を過ごしてほしいと願い、日本の一般生活者向けに医療や健康に関する情報を発信しています。「5つのM」について、そして山田先生が注力する情報発信の取り組みについてお話しいただきます。 ※本記事は、日本慢性期医療協会との連載企画「慢性期ドットコム」(https://manseiki.com/)によるものです。
◇「5つのM」とは―米国・カナダにおけるその効果や影響
米国やカナダの医療機関では、米国老年医学会によって提唱された「5つのM」が、老年医学のエッセンスを分かりやすく伝える標語として活用されています。それは、以下の5つです。
1)Mobility(からだ/身体機能):可動性とも訳され、どのくらい動けるかを指す。身体機能に合ったサポートが必要。 2)Mind(こころ/認知機能・精神状態):脳や心の健康について、適切な評価のもと、できることがあれば予防することが大切。 3)Medications(くすり/ポリファーマシー):高齢になると多くの薬を服用するケースが増えるが、薬とうまく付き合うことも必要。 4)Multicomplexity(よぼう/多様な疾患):年齢を重ねると複数の病気を抱えるリスクが増加する。そうならないための予防が重要。 5)Matters Most to Me(いきがい/優先順位):人生の中で大切なものの優先順位を決めること。治療方針を決めるうえで羅針盤ともなる。 山田悠史著『最高の老後 「死ぬまで元気」を実現する5つのM』(講談社)より抜粋