政府が拡充検討する大学給付型奨学金 桁違いに学費高い米国はどんな仕組み?
スカラシップにまつわる数字あれこれ
米教育ローン最大手のサリーメイ社による調査「How America Pays for College 2017」(調査対象者は今年子どもが大学に進学した800人の親と800人の大学生)によると、調査対象家庭のほぼ半分が学費や生活費などのためにスカラシップを利用していました。うち87%は大学独自のスカラシップと、大学が単独で最大のスカラシップ提供機関であることがわかります。 2017年に典型的な家庭が大学関連費用に費やした額は平均で2万3757米ドル。うちスカラシップとグラントでカバーされたのは35%で、金額にすると8390米ドル。これは過去10年で最高です。一方、費用を全額スカラシップでカバーできた学生は1%にもなりません。 ストレートな右肩上がりではありませんが、この10年で大学関連費用は約38%上昇しています。それだけに返却の必要がない「フリー」なスカラシップを模索する家庭は年々増えており、獲得競争もその分熾烈になっている現実があります。今年は70%がなんらかのスカラシップを模索したものの、実際にそれを活用しているのは49%でした。 調査対象となった家庭のほぼ100%が、大学進学は子どもの将来への投資だと答えたということですが、大学選びで費用がネックになったと答えた家庭が69%と、過去10年で2012年と並んで最高になりました。 「大学費用を捻出するために節約をした学生は68%」「学生の大半(76%)が費用をカバーするためにアルバイトをしており、労働時間を増やした学生も50%」「50%が自宅から通学」「18%が就職に有利とされるものに専攻を変更」 ── 調査には高額な学費に翻弄される米国の大学生の姿を表す数字が並んでいます。
教育の機会均等とスカラシップ
米国のスカラシップ制度は、上がり続ける大学の学費に対して教育の機会均等を確保するために、官民および教育機関がそれぞれ発達させてきたという側面を持ちます。はたして日本では、その道が政府主導で開かれることになるのか? 安倍政権が唱える「人づくり革命」のひとつが、「将来への投資」としての「高等教育」であるのならば、日本の大学も政府と歩調を合わせ、米国の大学さながらにスカラシップ・プログラムを充実させる時がきているのかもしれません。 卒業生が出身校を寄付というかたちで支えるという考え方が根づいている米国。スカラシップを受けた優秀な学生たちなら、出世して「恩返し」してくれる可能性もそれだけ高いというもの。あいにく筆者自身は、お世話になった日本文化研究センターに多額の寄付ができるほどの飛躍はできていないのですが、「いつか必ず」を胸に精進の日々です。日本にもこのようなスカラシップと恩返しの文化が根づけば、大学と学生に新たなWin-Winの関係がもたらされる……メリットベースのスカラシップにはそんな可能性も秘められているのではないでしょうか。 ---------- 金子毎子(かねこ・まいこ) 在ブルックリン。ニューヨークの日系新聞編集長を経て、現在は国際人権団体のコンサルタントおよびフリーランスのライター、編集者、翻訳家。