政府が拡充検討する大学給付型奨学金 桁違いに学費高い米国はどんな仕組み?
11月はスカラシップ月間
とはいえ大学ともなると、スカラシップ獲得レースはもっと熾烈です。なにしろ入学希望者の数が違います。学業成績はもちろんのこと、スポーツ実績、ボランティアやコミュニティ活動など、他の応募者との差別化をかなりはからねばなりません。そして入学のずいぶん前から、計画的にスカラシップを探して応募、というプロセスを経て晴れて獲得できる(学生もいる)のです。 National Scholarship Providers Associationという、スカラシップを提供したい大学や基金、非営利団体および企業などにそれについての助言やリソースを提供する非営利団体が、おりしも今月11月をスカラシップ月間と定めています。来年9月の新学年度にむけて、多種多様なスカラシップ・プログラムの検討をはじめるよう促すために設けられたそうです。たとえば今月11日にニューヨークタイムズ紙のスカラシップ・プログラムがそうだったように、来年度に向けた申請の締め切りが、10月末あたりから4月くらいまでの間に大小続々とやってきます。 ニューヨークタイムズ紙のスカラシップの条件は、(1)ニューヨーク市で来年高校卒業予定の生徒であること。(2)学業成績が学年トップ10%であること。(3)これまでの受賞者と同様のチャレンジや障害に直面していること。(4)かなり経済的なニーズを抱えていること。 1999年から始まったこのプログラムは読者の寄付金で成り立っていて、選ばれると毎年卒業まで1万5000米ドル(約166万円)を受け取ることができるだけでなく、同紙でインターンシップをしたり、師弟指導を受けたりできます。選ばれるのは恵まれない家庭環境という逆境にもめげず優秀な学業成績を修めてきた高校生。経済的必要性が受賞基準となる「ニーズベース」的要素をもつ、「メリットベース」プログラムです。
ニーズベースとメリットベース
ニーズベースとは、受給対象者の家庭環境や経済状況などを基準に支援を決定するスカラシップです。最たる例は米連邦政府の「連邦ペル給付奨学金」。主に学士課程の入学予定者を対象に、資産テストで家庭から出せそうな額を算出、授業料や生活費との差額をもとに援助額が決定されます。 ちなみに2017-18年度の最高支給額は年間5920米ドルです。ニーズベースなので、申請時に一定の学業成績を求められることはありませんが、入学後はGPA(Grade Point Average-成績平均値4.00が満点)を十分(基準は大学による異なる)に維持している、毎学期一定の単位を履修しているなどの条件を満たさないとなりません。 メリットベースとは、学業成績やスポーツ実績が卓越した学生、ボランティア活動などでリーダーシップを発揮した学生に経済的援助をするスカラシップのことで、優秀な学生を集めたい大学などが中心のスカラシップです。つまり、受給する側にも提供する側にも何らかのメリットがある、ということですね。こちらは先ほどのタイムズ紙の例にもあるように、応募の際に様々な条件がついてきます。 その名も「College Scholarships.org」のスカラシップ検索エンジンで検索してみました。1番上に出てきたスカラシップの第1条件は「イタリア系であること」。年間最大2万5000米ドルを援助してもらえる大型プログラムで、米国イタリア系移民を代表する非営利団体のものでした。 2番目のスカラシップは全米黒人地位向上協会(NAACP)のもの。「協会の会員(黒人/アフリカンアメリカン)で25歳未満」「米国市民」「大学在学中のGPAが少なくとも2.5(ABCD評価で平均C+以上)」「経済上のニーズがある」が条件で、年間最大2500米ドルのプログラム。 そのほか、ユダヤ学専攻、アルメニア系、戦死・負傷した退役軍人を親に持つなど、米社会の多様性をそのまま反映したような実に様々な条件のスカラシップが並んでいます。