「自然に曲がる」を追求 新型Mazda3 マニアックに試乗解説
エコタイヤでは自然に曲がるクルマは作れない
さて、(1)タイヤが捻られる、(2)トレッドが変形して接地中心が移動する、(3)スリップアングルが付く、(4)スリップアングルによってサイドフォースが発生する――まで説明した。タイヤが横方向の力を出し始めたのだ。 これによってクルマは自転運動を始める。俗に言う“ヨーが立ち上がった状態” (クルマを真上から見てその軸を中心に回転し始めた)だ。クルマにヨーがつくとクルマの重心が外側前輪方面へ移動する。この移動量を規制するのがサスペンションスプリングで、移動速度を規制するのがダンパーだ。まずここまでを見よう。 タイヤのトレッド剛性の高さとタイヤ全体のケース剛性がトレッド面の変形を決めるので、まずそれを最適にすること。今回のMazda3で言えば、セダンは雪や泥濘路を想定したオールシーズンタイヤのために、トレッド面に配置されたブロック剛性が低い。これがハンドル操作に対しての反応をわずかに混濁させている。対してサマータイヤを履くハッチバックはオールシーズンタイヤに対して、ブロックの剛性が高いので、スッキリして俊敏な動きをするのだ。 と書くと、「そうかタイヤが変形するのはダメなんだ」と考える早とちりの人がいるかもしれないが、そうではない。ここまでのタイヤのメカニズムを振り返ってもらえば分かるように、適切な変形こそが曲がる力を生み出す。ところが、ゴムは変形すると発熱する。それは別の角度から見れば、エネルギーの消費だ。燃費が悪くなる。だから最近のエコタイヤはこの内部熱損失(ヒステリシスロス)を嫌って、それを減らす競争に血道を上げている。 マツダは、それでは自然に曲がるクルマが作れないと考え、タイヤメーカー4社に専用タイヤの開発を依頼した。採用されたのはトーヨータイヤで、今回の第2世代SKYACTIVアーキテクチャーにとって非常に重要なパーツになっている。おそらくはアフターマケットでタイヤを違う銘柄に履き替えると、ここのバランスが狂ってしまうと思う。