「自然に曲がる」を追求 新型Mazda3 マニアックに試乗解説
専用タイヤの開発をメーカーに依頼
さて次に、クルマの重心が移動する間に起きることだ。左にハンドルを切ると右前輪に荷重が移動し、左後輪から荷重が抜ける。右前の沈み込み量と速さをそれぞれスプリングとダンパーで規制したが、それだけでは十分ではない。左後ろが伸びる量と速さも重要だ。もちろん、これを規制するのもスプリングとダンパーだ。右前と左後ろのバランスによって、どのくらいの移動量と速度で荷重が移動するかが決まる。当然、それはタイヤの性能とバランスさせなくてはならない。 マツダは「第6世代」の時から、この斜め(ダイアゴナル)ロールに着目し、連続的かつ適切なロール量を見極めようとしてきた。エコタイヤ全盛の今、アシのセッティングだけではどうにもならないことを見極めたマツダは、タイヤ開発を依頼したのである。
ただし、フロントタイヤはもちろん、ダイアゴナルロールをきれいにコントロールするためには、シャシーの剛性向上が必須である。特に斜め方向を結ぶ構造材を強くしなくてはならない。だからマツダは縦横の環状構造を増やして、力の伝達が混濁しないシャシーを作ったのだ。 さて、ヨーが立ち上がって、クルマの進行方向が変わると、今度はクルマの中心軸と実際の進行方向にズレが生じる。これによって、転舵軸を持たす、舵角の付けられない後輪にもスリップアングルが付き始める。先のお約束を思い出してもらえば分かるが、このタイミングで初めてリヤタイヤもサイドフォースを発生させ、遠心力に対抗する求心力を出し始める。
問題はリヤタイヤの支持剛性である。上の理屈では車両の中心線とリヤタイヤの中心線は一致することになっているが、現実にはタイヤはサスペンションを介して車両に取り付けられているので、微細に見ればズレが生じる。これを可能な限り小さくしてやらないと理屈通りに作動しない。 マツダはH型構造を持つトーションビームアクスル(TBA)を導入することで、これを解決することにした。現行モデルのアクセラにはマルチリンク式のリヤサスペンションが採用されている。これは多くのリンクアームを使って、スリップアングルによる横力やロールの力でタイヤの向きをコントロールしようとする仕組みだ。横から押されたらタイヤのつま先が内股になって、スリップアングルが付きサイドフォースを発生させたり、ストローク時に接地面と路面の接触角度(キャンバー角)をコントロールしたりする。 ところが、これは横力が入る限りどんな場面でもサイドフォースを発生するし、ストロークすればキャンバーが必ず変わる。それはある種の自動装置であって、人間が操作に関与していない。それは人間中心ではないのではないかとマツダは考えた。