石破首相に少数与党の洗礼、バイト学生らの「年収の壁」が第一関門
(ブルームバーグ): 年末の繁忙期に学生らがアルバイトを控えざるを得ない状況の改善は、政府が月内に取りまとめる総合経済対策の焦点となっている。衆院で少数与党に転落した石破茂首相が政権を維持していくには、野党が求める政策への歩み寄りが必要だ。
先月の衆院選で躍進し、第2次石破内閣の政権運営の鍵を握る国民民主党は、賃金上昇に伴い所得税の支払い義務が生じる年収「103万円の壁」を引き上げることを求めている。この非課税限度額が、学生を含むパートタイム労働者がより多くの時間働くことを思いとどまらせており、衆院選における争点の一つとなった。
東京で1人暮らしをする大学4年の曽我将永さんは、「最低賃金を上げても、103万円の壁が変わらなければ意味がない」と話す。都内の医療機関で事務員としてアルバイトをする曽我さんは、時給1800円で多い月には17万円程度を稼ぐこともある。両親からは、非課税上限を超えないように言われているという。
所得税課税は年収103万円を超えた額のみが対象で最低税率は5%のため、大学生自身の税負担は大きくはならない。問題なのは103万円を超えると親が扶養控除を受けられなくなることだ。一般の控除対象扶養親族の控除額は38万円だが、19歳以上23歳未満の大学生の場合は特定扶養親族として65万円となる。それがなくなる分、親の給与の手取り額への影響は相対的に大きい。
東京大学社会学研究所の近藤絢子教授は、大学生は特定扶養親族として親の所得から控除される額が大きくなるため、「103万円以下に抑えるインセンティブ(動機)が実際にある」と指摘する。
東大大学院修士課程2年の劒持彩人さんは、東京で暮らすには「少なくとも月15万円は必要」と語る。月収を8万円程度に抑えないと超えてしまう103万円の壁の引き上げは、1人暮らしの大学生にとって切実な問題だ。
年収の壁の引き上げは、石破政権に協力する見返りとして国民民主が求めている経済政策の柱となっている。玉木雄一郎代表は1995年からの最低賃金の上昇率1.73倍に基づき、所得税の非課税枠を178万円に引き上げるよう主張している。