AIやXRを使いこなす「Z世代」、企業はどう生かすべきか
筆者が会長を務めるCreative Strategies(クリエイティブ・ストラテジーズ)が実施した最新調査で、Z世代(おおむね1990年代後半から2000年代生まれ)にみられる主要傾向がいくつか目に留まった。これらは、彼らが労働市場に参加するなかで、企業に大きな影響をもたらす可能性がある傾向だ。 新たに生まれつつあるこうした変化を見落としてはならない。Z世代のスキルや、企業に対する期待が、労働の未来を再定義することを思えば、なおさら看過すべきではない変化だ。 いまのところ各社は、既存従業員の生成AI関連スキルを向上させることに注力している。これは確かに重要だ。しかし、社会人になりつつあるZ世代の年長層は、すでに重要なツールを2つ身につけている。それは、高度なAIを運用する高い能力と、XR(VR、AR、MRといった先端技術の総称)の扱いに長けているという、彼らの世代ならではの能力だ。そして彼らは、この2つのスキルを職場で生かしたいと意気込んでいる。 はじめに、AIに対するZ世代の取り組む姿勢を考えてみよう。インターネットやパソコンのある環境で育ってきたデジタルネイティブのZ世代は、AIを試しているどころか、AIに深くのめり込んでいる。いまでは、学校の課題、ソーシャルメディアのコンテンツ、ポッドキャスト、そしてインフルエンサーエコノミーに至るあらゆることに生成AIを役立てている。AI駆動型ビジュアルツールの活用法をすでに熟知しており、画像生成AIのMidjourneyやDALL-E 2で創造的なアイデアを生み出し、CanvaやPhotoeditor.aiで画像を編集し、動画ツールのVmakerやSubmagicで説得力あるマルチメディアを構築するといった具合だ。 さらに、AIでプレゼン資料を作成できるBeautiful.aiとPresentations.aiを使って、アイデアの提示法を根本的に変えている。Z世代は、社会人として働き始めるまでに、ベテラン社会人の多くが今ようやく導入を始めているようなツールを、完全に使いこなせているだろう。 Z世代には、高度なAIスキルに加えて、とっておきの切り札がもう1つある。それは、XRテクノロジーを自然に使いこなせる力だ。没入型のVRゲームとXRゲームが子どものころから存在しており、メタのMeta Questといったプラットフォームに慣れ親しんでいるし、アップルのApple Vision Proなどの新型デバイスもすでに体験済みだ。 こうしたテクノロジーは、仮想オフィスとXRワークステーションの先駆けであり、将来的にはオフィスとしての役目を果たす可能性がある。企業は、新入社員の育成や戦力化(オンボーディング)、トレーニングに、VRやXRを少しずつ導入し始めているが、Z世代に言わせればそうした取り組みは、プロセスの向上というより、当然のことだ。彼らは、これまで遊んできたことや身に着けてきたこととマッチする、没入型VRを使ったオンボーディングやトレーニングが実施されると期待している可能性が高い。 Z世代がこうしたテクノロジーにいかに慣れ親しんでいるのかを自分の目で確かめたければ、TikTokやインスタグラムを閲覧してみればいい。Z世代は、AIとXRを駆使してコンテンツを作成しており、その出来栄えは実に見事だ。そればかりか、彼らはそうすることでマーケティングスキルを磨いている。Z世代がAIやXRなどのツールを意欲的に学ぼうとしているのは、ただ創造力を発揮したいからだけではない。その奥には別の動機もある。インフルエンサーとしてTikTokやソーシャルメディアで知られる存在になり、たくさん儲けてやろうと考えている人は多いのだ。