日本人はいよいよ「絶滅」するのか、多くの人が直視していない「この国の厳しい現実」
この国の人口はどこまで減っていくのだろうか。今年1年間の出生数が70万人割れになるかもしれず、大きな話題となっている。 【写真】日本人は「絶滅」するのか…2030年に百貨店や銀行が消える「未来」 そんな衝撃的な現実を前にしてもなお、多くの人が「人口減少日本で何が起こるのか」を本当の意味では理解していない。 ベストセラー『未来の年表 業界大変化』は、製造・金融・自動車・物流・医療などの各業界で起きることを可視化し、人口減少を克服するための方策を明確に示した1冊だ。 ※本記事は河合雅司『未来の年表 業界大変化』から抜粋・編集したものです。
人口の未来は「予測ではない」
人口減少はビジネスやそれを支える公共サービスにさまざまな変化をもたらすが、雇用制度や労働生産性への影響はとりわけ多大だ。 例えば、年功序列や終身雇用といった日本特有の労働慣行だ。すでに崩壊し始めているが、これらはやがて続かなくなるだろう。第2部で詳述するが、定年などで退職する人数と同等か、それ以上の採用が安定的に続くことを前提としているからである。 年功序列の崩壊は、雇用流動化を促し、終身雇用も終わらせる。人口減少のようなメガトン級の激変の到来で、どんな企業も将来が安泰とは限らなくなった。企業は人々を支え切る存在ではなくなったことを認識する必要がある。 実は、人口の未来は予測ではない。「過去」の出生状況の投影である。 この1年間に生まれた子供の数をカウントすれば、20年後の20歳、30年後の30歳の人数はほぼ確実に言い当てられる。例えば新規学卒者が今後どれくらい減っていくのか確かめてみよう。
少子化がもたらす最大の弊害
大多数は高校や専門学校、大学を卒業する20歳前後で社会人になる。そこで20年後の「20代前半」が現在と比べてどれくらいの水準になるかを計算してみる。 厚生労働省の人口動態統計で2021年時点における「20代前半」を計算することが可能だ。該当するのは1997~2001年生まれなので、この5年間の出生数を合計すると593万3690人となる。一方、2021年の「0~4歳(=20年後に20代前半となる人たち)」である2017~2021年生まれは438万2242人である。両者を比べると20年後には、「20代前半」が26.1%も少なくなる。 多くの会社は何年も先まで見越して人事計画を立てる。わずか20年で新規学卒者が4分の3になったのでは計画を見直さざるを得なくなるだろう。短期間でここまで減ると、大企業や人気業種であっても求める人材を十分に採用できなくなるところが出てくる可能性がある。 これほどの若年世代の減少が待っているのに、年功序列や終身雇用を無理に続けようと単純に定年年齢を引き上げたならば、若手に閉塞感が広がる。 新規学卒者採用が減れば組織は新風が吹き込みづらくなり、マンネリズムに支配されることにもなる。少子化がもたらす最大の弊害は、各所で若い世代が極端に少ない状況が常態化し、社会や組織の勢い(=活力)が削がれることである。同じようなメンバーで議論を重ねていても、似たようなアイデアしか出てこない。 日本経済に新たな成長分野がなかなか誕生しなくなったことと、少子高齢化は決して無関係ではないのだ。 つづく「日本人はこのまま絶滅するのか…2030年に地方から百貨店や銀行が消える「衝撃の未来」」では、「ポツンと5軒家はやめるべき」「ショッピングモールの閉店ラッシュ」などこれから日本を襲う大変化を掘り下げて解説する。
河合 雅司(作家・ジャーナリスト)