「欲」を「志」に変える。事業を拡大させる経営者の魅力
宮宗氏はこうした起業家が持つ「人としての魅力」を、投資するうえで重要視していると話す。
宮宗氏「大きな事業をつくるとなったら、そのトップが実際に人材を惹きつけ、採用できないといけません。また、自分一人だけが得点力が高くても周りを惹きつける魅力がなければ、周囲もパスは出さないためチーム力が高まりません。事業拡大に向け、良い人を採用して組織力を強化するためには人としての魅力が欠かせないのです」
では、人の魅力とは具体的に何か。
宮宗氏「シンプルに『また会いたい』『また仕事がしたい』という『また』があるのが前提です。そのうえで、まずは出自や経験にもとづいた大きな志があり、他とは段違いの実行力を兼ね備えている方ですね。初期のフェーズでは『好きなことでお金を稼ぎたい』など、個人的な欲があって当然ですが、事業が拡大するためには、その“欲”を企業の成長とともに大きな“志”へと変える必要があります。私が『ソフトバンク』の孫さんにお会いしたとき、『志と夢は違う』と言われたことがあります。志は周囲から支持される一方で、夢は個人の欲に過ぎないと。成長の過程ではどうしても乗り越えなければならない困難と必ず遭遇しますが、そういった場面を逃げずに乗り越えられる方は、夢を志に変え、内に向いていたベクトルを外に向けられる方だと感じます。AnyMind Groupも、ロシアのウクライナ侵攻の影響などで2回も上場を延期しましたが、3度目の挑戦で上場を果たしました。起業には予想もできない出来事が起きるからこそ、大きな志を持ち、足を止めない実行力が必要なのです」
「強烈さ」と「チャーミングさ」がスケールする起業家の共通点
続いて印象に残ったスタートアップについて鈴木氏は、Vtuberからメタバースまでバーチャル領域の事業を展開する「カバー」を挙げる。
鈴木氏「最初に創業者の谷郷元昭さんにお会いしたとき、1時間の打ち合わせが気づいたら2時間半になっていました。谷郷さんは自らの世界観を持ち多弁ではなく落ち着いて淡々とシンプルに整理しながら、会社や事業について真剣にプレゼンしてくださいました。私も強く関心を持ち質問や助言などをする中で、話が日本からグローバル、今から未来へと広がり、あっという間に2時間半がたちました。その時間で必要性や相性を感じ取っていただけたのか、その直後からメンターの依頼があり、定期的なメンタリングが始まりました。最初は月に1度だったものが、2カ月後には毎週に変わり、経営者である谷郷さんとの経営者的アジェンダから始まった相談が組織や人事領域など実務的な部分にも及ぶようになっていきました。今では、執行役員の方や人事の各グループのマネジャーである現場の方々など詳細な実務的なアジェンダのメンタリングもしています。我々DIMENSIONはお金を支援するだけでなく、そして経営者だけでなく現場の方とも向き合いながら、上流戦略に限らず実務部分も含めて伴走するのが特徴です。DIMENSIONのそういった部分を信頼し、谷郷さんはパートナーとして選んでくれたのだと思います」
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