ザックが多用する「インテンシティ」とは?
キャンプ地であるフロリダ州クリアウォーターにチームが入ったのが5月29日の夜。それから4日経ち、この地での最初のテストマッチ、コスタリカ戦を迎える。ここまで選手たちは練習以外の時間を散歩やDVD鑑賞、ゲームなどに当て、思い思いの時間を過ごしている。ホテルの部屋からは海が一望でき、「環境は最高なので、リフレッシュできている」と香川真司は言う。来るべき決戦に向け、オンとオフをしっかり付け、メンタル面を整えるのは、重要なポイントだ。
今合宿では、選手ミーティングも開かれた。「指宿合宿ではフィジカルをやったので、アメリカに入って違う環境になって、ここからまた、みんなでやっていこうという確認をした」キャプテンの長谷部誠が説明。「今、チームの雰囲気は悪くないけど、そういう状況だからこそ、みんなで細かい部分をしっかりつめて、やっていこうという話をした」。 合宿地としてクリアウォーターが選ばれたのは、高温多湿で、W杯を戦うレシフェやナタウと気候が似ているからだ。本番と近い環境で暑熱対策を行って体を慣れさせ、初戦でコンディションが100パーセントになるようにして、厳しい条件下でもインテンシティを発揮できるようにする狙いがある。インテンシティとは「強度」を意味する言葉だが、ザックジャパンでは「回転数」「連続性」「連動性」「活動的」といった意味で使われる。指揮官が説明する。 「例えば、オフ・ザ・ボールのときには相手のボールホルダーに対してアプローチしに行き、その後ろの選手も連動して動く。オン・ザ・ボールのときには足下だけでつなぐのではなく、スペースにボールを出す、走りながら素早くボールを進めていくというように、活動的になることでもある。このチームが素晴らしいゲームをするのは、コンディションが良く、インテンシティが発揮されているときだ」 5月27日のキプロス戦は、直前の鹿児島・指宿合宿で厳しいフィジカルトレーニング積んで臨んだ一戦だった。予想どおり、選手たちの足取りはやや重く、体のキレを欠く選手もいたが、その一方で、収穫の多いゲームでもあった。長谷部誠、内田篤人、吉田麻也といった直前までケガを抱えていた選手たちにメドが立ち、新戦力の大久保嘉人がスーパーサブの役割を果たせることも見えてきた。連動した守備や左サイドからの崩しなど、これまで積み重ねてきたことの確認もできた。ただし、数字は正直だった。走行距離はチーム全体で平均7~8キロ。例えば、香川は普段、マンチェスター・Uで1試合平均11キロ前半から12キロ後半をマークするというから、キプロス戦の数字が著しく低かったことが分かる。