前兆は2度の「M8級大地震」だった…歴史上“最新”の「富士山大噴火」の地獄絵図 「黒雲が空一面を覆い、蹴鞠ほどの火山岩が降り注いだ」
黒い雲が西の方から出てきて…
折からの偏西風のため、火山岩、火山灰は富士山麓東側を中心に降り注いだ。生土村(いきどむら、静岡県小山町)の住人が書いたといわれている『降砂記』を口語訳するとこうだ。 〈大地が急に大きく揺れて、しばらくすると黒い雲が西の方から出てきて空一面を覆った。雲の中からは百千万もの雷鳴がとどろき、午前10時ごろには石や砂が空からどんどん降ってきた。大きい石は蹴鞠(けまり)のようで、地面に落ちると砕けて割れて火の粉を出し、草木を焦がして民家を燃やした。 時折、雷鳴が東西の方向から真ん中に響き、また東西に広がっていく。数十里の範囲にいるものはこれを聞いて、自分の頭の上で雷がとどろくように感じるほどだった。火の燃え上がっていないところは日中でもまるで夜のように暗く、ロウソクを灯してみると黄色く色づいており、まさに空が崩れるような世の滅びの時が来てしまったかに思えた。 老若男女はみな仏前に座り、声高に仏名を唱え、丁寧にお経を暗誦し、ひたすら早く臨終したいと祈った。夜中になって雲間に星の光が見え、天はまだ落ちていないということを知ったが、それでもなお石や砂が降ってきて、どうして生きていられよう、と早く死にたがった〉 *** ついに大爆発を起こした富士山。第2回【「富士山大噴火」で“東京ドーム約800杯”分の火山灰…噴火の衝撃以上に「二次災害」が江戸時代の人々を苦しめ続けた理由】では、16日間にわたった噴火による甚大な被害、その後の被災地が飢饉に見舞われた理由などを伝える。 デイリー新潮編集部
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