受動喫煙による肺がん発症のメカニズム解明 国立がん研など
なお、今回の研究対象を女性に限定したのは、男性患者の受動喫煙では居酒屋など一時的なものにとどまり、保護者や配偶者の喫煙環境に日常的にさらされるという類似した環境下にあるのは女性が多いためだという。また、肺がんを発症したのは受動喫煙から数年~数十年後を経た60代以降が多かった。
解析の結果、アポベック型変異は、受動喫煙があるたばこを吸わない女性に突出して発現していた。この変異は喫煙女性にはほぼ見られなかった。また、喫煙女性に見られるたばこ型変異は、受動喫煙の有無を問わず、喫煙しない女性患者にはほとんど見られなかった。
今回の研究では10代と30代での受動喫煙の影響を比較できるほど患者の母数が多くなかったため、河野分野長は「今後はより多くの患者を調べて、保護者の下と配偶者の下での受動喫煙による世代差のゲノム情報の違いを調べていけると良いと考えている」と話す。その上で「遺伝子変異を調べることは、抗がん剤のターゲットを考える戦略において非常に重要」としている。そして、受動喫煙を防止するために屋内での全面禁煙や、屋外で受動喫煙にさらされないように環境を整えることが望ましいという。
研究は日本医療研究開発機構(AMED)や内閣府主導の官民研究開発投資拡大プログラム(PRISM)などの支援を受けて行われた。成果は国際学術誌「ジャーナル オブ ソラシック オンコロジー」の電子版に2月19日に掲載され、4月16日に国立がん研究センターなどが発表した。