三笘薫からも「素晴らしい」 スタンドから起きた大合唱…遠藤航がリバプールで必要とされる唯一無二の能力【現地発コラム】
コントロール重視のチームで必要とされる能力と経験
だからといって、巷で囁かれる「移籍すべき」との声がなくなることはないのだろう。昨季を主軸として終えた31歳にすれば、プレミアでベンチスタートが続く今季を「不遇の時」と理解されても無理はない。定位置を奪った格好のフラーフェンベルフは、遠藤に10点満点で7点を与えるとすれば、6点が精一杯と思えたこの一戦でも最後までピッチに立っていた。 もっとも、新監督のチームとしては「フェア」な状況だとも言える。攻撃志向の基本線は同じだが、リスク覚悟だったユルゲン・クロップ前監督に対し、スロットは“リスク管理”派。中盤の底にはボールロスト後の“保険”よりも、ボール支配を続けるための“中枢”を好む。 そこで抜擢されたフラーフェンベルフは、遠藤と同じ移籍1年目、出場機会も起用法も中途半端だった昨季を経て、新監督の期待にパフォーマンスで応えている。リーグ戦10試合を、20チーム中最少の6失点で首位に立つスロットのリバプールは、「“コントロール”は最大の防御」を地で行っているチームだ。 とはいえ、中盤中央に「真の防御」を必要とする試合は必ずや訪れる。ブライトンにリードを許した第10節は、その一例でもあった。明らかに敵が上回っていた前半、フラーフェンベルフとMFアレクシス・マック・アリスターの2ボランチは攻守に機能不全に陥っていた。フィルターのかからない中盤を軽快なパスワークで通過された末、相手右ウインガーのDFフェルディ・カディオグルにゴールを決められた。 後半の2分間で、FWコーディ・ガクポとFWモハメド・サラーがネットを揺らした一気の形勢逆転は、さすが優勝候補の底力だった。だが、トップ6候補からトップ4候補への脱皮を期すブライトンが引き下がるはずもなく、1点リードのリバプールはクローザーを必要とした。 攻守のバランスや周囲との連携にも意識を割くボランチとして、その役割をこなす能力と経験を備えた戦力は現チームにただ1人。中央に残ったフラーフェンベルフとコンビを組み、投入40秒後にボール奪取を試みた遠藤しかいない。 本人は、クラブ公式の試合後インタビューで、自身を含む途中出場5選手が揃って力を発揮した点に関して、「チームには全員の力が必要になる」と話している。国内外で優勝を狙う強豪では、スカッドとしての総合戦力がシーズンの成否を左右するのだ。 今季開幕前に話を聞いた際に遠藤が「獲れるタイトルは全て獲りにいく」と言っていたリバプールも例外ではない。まだ前半戦半ばの第10節終了時点だが、同節の3日前には敵地でのリーグカップでブライトンを下し(3-2)、準々決勝進出を決めたばかり。3日後には、ポイント数ではリーグフェーズ首位タイのチャンピオンズリーグでレバークーゼン戦が控えているという忙しさだ。