【経済予測の達人】ニトリHD・似鳥昭雄会長が読み解く2025年の経済 為替は「1ドル145円前後まで円高が進む」、日本企業は「大手が中小を呑み込む」淘汰と再編の時代へ
そうして各小売業を俯瞰すると、総じて大手がよく、中小企業が苦しい。これからは大手が中小を呑み込み、業界の垣根さえなくなっていく方向に進んでいくと見ています。 資本主義の本場・米国では、実店舗を持つ「ウォルマート」とネット通販の「アマゾン」という二大巨頭による寡占化が進みました。結果、50年以上トップを走った百貨店の「シアーズ」とディスカウントストアの「Kマート」が経営統合したものの倒産。おもちゃやスポーツ用品、書籍などの各大手企業も淘汰され、業界自体がなくなりました。家電も残るは「ベスト・バイ」のみという状況です。 この先行事例に、日本も続くでしょう。 現在の日本は業界ごとに5~10社ほどの大手が「競合」していますが、今後10年以内に米国流の「競争」に移り変わると予想しています。業界をまたいだ淘汰、再編の時代になっていくはずです。その時、10社あった大手は1~3社しか残らないかもしれません。 経済産業省も「企業買収における行動指針」を公表してM&Aを後押しします。ニトリも大再編の時代に先駆け、2020年にホームセンター大手の島忠と経営統合しました。 とりわけ中小企業のビジネスは曲がり角を迎えています。欧米と比べると日本は中小企業の数が2~3倍ほどあり、政府も貸し付けなどで力を貸してきましたが、昨年の中小企業の倒産件数は過去最多。今年は一層増えると考えられます。 本来、資本主義では健全な競争のなかからイノベーションが生まれて、企業や業界が発展していきます。その過程で力のない企業が淘汰されるのは、経済を明るくするために必要なことでもある。 淘汰されるのが嫌なら、経営者は今やっていることを否定して、新しいことを始める必要がある。激しい競争を生き抜くには、変化を恐れてはいけないと思います。 ■もっと読む:【ニトリHD・似鳥昭雄会長インタビュー】ドラム式洗濯乾燥機で「10万円切り」を実現、「価格を安くしながら賃金を上げる」ために欠かせない“労働生産性向上”への取り組み ※週刊ポスト2025年1月17・24日号