【経済予測の達人】ニトリHD・似鳥昭雄会長が読み解く2025年の経済 為替は「1ドル145円前後まで円高が進む」、日本企業は「大手が中小を呑み込む」淘汰と再編の時代へ
ニトリについては、為替は1ドル150円設定で、想定より2円円安でしたが、現時点で目標を達成できているのは、会社が“筋肉質”になった結果だと思います。145円程度まで円高が進めば、その分はお客様に値下げで還元したいですね。 ただし、楽観してばかりもいられません。トランプ次期大統領の政権運営が、世界経済を大きく左右するからです。 「アメリカ・ファースト」を掲げるトランプ氏はドル安主義者であり、安いドルを通じてインフレを抑え、自国の製造業を復活させたい。それゆえ円高ドル安の流れが強まると考えられます。 ただし、中国をはじめとする他国からの輸入の関税を高くするとも宣言しています。そうすると米国でインフレが起き、利上げが必要になって為替は円安ドル高に動きかねない。そのあたりのバランスがどう取られるのかは非常に読みにくいですが、ドル安のほうが強いのではないでしょうか。
淘汰と再編の時代が来る
〈日本経済全体が堅調に推移すると見る似鳥会長だが、日本企業が現状のままのかたちでいられるとは考えていないという。〉 気になるデータがあります。 日本の景気のバロメーターである新設住宅着工戸数は景気が良いとされる年間100万戸を目指したいところですが、80万戸で推移して前年比マイナス1%。消費者マインドを示す「消費者態度指数」も足踏みが続いています。 ニトリでは各小売業の既存店売り上げ伸び率データを毎月確認します。家電量販店は都市型の店舗が多いビックカメラがインバウンドの影響もあって好調で、衣料品専門店はユニクロのファーストリテイリングが圧倒的に強い。絶好調なのが、ドラッグストア。食料品も販売しはじめ、スーパーのお客様を奪っている格好です。 一方、前述した消費者態度指数のうち、ニトリにとって重要な「耐久消費財の買い時判断」の指数は芳しくありません。物価高に賃上げが追い付いていないからでしょう。「衣食住」のうち、衣と住はどうしても後回しになります。